私たち日本人は「宗教」と聞くと、
眉をひそめたり、遠ざかろうとしがちです。
いっぽうで、クリスマスだったり初詣だったりの宗教行事に参加しています。
以前から私は日本人の宗教観を「テキトー」としていますけれど、
この「テキトー」に扱えないような「宗教」を日本人は避けたいんだと思います。
しかし、世界は違います。
こんなテキトーな宗教観が通用するのは日本だけ。
日々飛び込んでくるニュースの表と裏には宗教が存在しています。
大雑把にいえば、日本は仏教国ですけれど、
その実、無宗教的だったりしますが、
世界で一番の無宗教国は中国ではあるものの、
ここも仏教国でありつつも、政治的には宗教は認められていません。
先月もこんな報道がありましたよね。
中国共産党、党員の宗教禁止徹底…民族対立が深刻化恐れ 習氏表明、全国調査へ
http://www.sankei.com/world/news/141116/wor1411160006-n1.html
彼の国では宗教は全て迷信であるという立場なので、
当然、公に信仰に基づいた言動は行えません。
そして、二番目の無宗教国が日本で、
政治的な制限を受けている中国を別にすれば
この日本が世界で一番の無宗教国なのかもしれません。
日本にもたくさんの外国の方がいらっしゃるようになりました。
日本国内でも、彼らの私たちとは異なる価値観に
触れることもあろうかと思います。
テキトーな宗教観の日本人だからこそ、
それぞれの宗教的価値観を知っておきたいことですし、
尊重できるのではないかとも思います。
キリスト教では神を「GOD」、
イスラム教では「Allāh」、
ユダヤ教では「YHVH(Yahweh)」としています。
(但し「神」という言葉自体、日本的価値観の「神」とは異なる)
しかし、これらの神は同一のもので、
キリスト教はユダヤ教の複雑な戒律を
約2000年前にナザレのイエスが単純化し、
救済を得るための手段を容易にし、現在の多くの信仰者を得ています。
そして、イスラム教も元々はユダヤ教から生まれたもので、
約1400年前にムハンマドが「神の下の平等」を説いて、
これも現在、多数の信者を抱えています。
元々、最初の預言者アブラハムから始まっていることから、
これら三宗教は「アブラハムの宗教」と呼ばれ、
ユダヤ教から見れば、キリスト教もイスラム教も所詮新興宗教で、
逆にキリスト教やイスラム教は、
より進歩的な考え方なのであるから正しいのだという主張が可能になります。
元が同じだからこそ、相容れない部分も多く、
紛争の火種となることもあります。
今回の講師は比較宗教学者で、
中央大学総合政策学部教授の保坂俊司先生。
「無知はトラブルのもと」と題し、
日本人が知らない世界の宗教のマナーを紹介してくださいました。
そして、毎回、この番組では役者さんにドラマを演じていただき、
そのテーマをわかりやすく学習していますが、
今回は今までになかったトラブルもあったようです。
外国人の役者さんが必要な今回のテーマで、
いざオファーを出してみると、
自分の信仰は違うからその演技は出来ないと断られたんだとか。
それほど、宗教、信仰はその人にとって大切なものなんですね。
転勤ドラマ"海外赴任は突然に(秘密のケンミンSHOW風)"
株式会社ビーバップ商事に勤める日本一(ひのもとはじめ)は、
妻・晴子とともにサウジアラビアに転勤することとなりました。
晴子は頭を覆うためのヒジャブを用意することにします。
新しい勤務地に到着した夫婦は出迎えの現地社員に
ヒジャブ姿の晴子が手土産の紙袋を手渡しました。
礼を述べた現地社員は早速皆に配ろうと袋を開けましたが、
突然顔を曇らせ、慌てて袋を閉じてしまいました。
夫婦は子供たちに喜んで貰えるだろうと、
くまモンやハローキティなどの日本で人気の縫いぐみを持ってきていたのです。
イスラム教徒へのお土産で気をつけなくてはいけないのが
キャラクターグッズなどです。基本的にこれらはタブーとなっています。
しかし、考え方には宗派や地域差が大きく、問題ない場合もあるでしょうし
サウジアラビアなどではマネキンに顔があってはいけないなど
厳しかったり様々のようです。
偶像崇拝はアブラハムの宗教共通なので、
ユダヤ教はもちろんキリスト教もそうなのですが、
キリスト教の場合、イエスやマリアの像、十字架などは
布教優先などの理由で認められてきたようです。
サウジアラビアに日本から来客が。同じビーバップ商事の男性の同僚です。
しかし、夫は他用で手が離せません。
妻が一人で空港に行き、無事出迎えることが出来ました。
二人はタクシー乗り場へ。
すると「あたなたちは夫婦なのか」と尋ねられました。
夫婦ではありませんので、否定しますと、
別のクルマに乗れと言われてしまいます。
乗り場も違うようでした。
イスラム教では公共の場所での男女同席を禁じています。
宗教施設は元より、映画館や病院、
学校も小学校の段階から教室は男女別になっていて、
厳しいところでは、通学路も別々に。
コーランには女性は顔と手以外を隠し、
近親者以外には目立たないようにしなけらばならないと書かれています。
これには男性は美しい女性を見ると欲望を抑えられないので、
女性の安全のためという理由があります。
だから、特にアバヤやブルカ着用のように
ヒジャブ以上に髪と顔全体を覆い隠すことを
義務づけている地域もあるのでしょう。
夫のいる女性の容姿を褒めてはいけないのも、
そういう理由なんですね。
日本一は外では食べられない豚肉の生姜焼きを妻に作ってもらっていました。
イスラム教では豚肉は禁忌なので、
その入手が困難であることも。
イスラム教ではイスラム法で許された(ハラール)食品のみを
食べることが出来ます。
これは肉などの直接口に入るもの以外に、
油や触媒のような調理段階、製造段階でも守られなくてはなりません。
2000年にはインドネシアで味の素が
発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素を使用していたことがわかり、
逮捕されるという事件もありました。
また、食べられる食肉においても、
特定の儀礼に則った屠殺作法を用いていないといけません。
貴重なブタの生姜焼きを楽しみつつ、
申し訳なさそうに一は妻に一枚の紙を手渡します。
それは辞令。今度はイスラエルに異動することとなったのでした。
…続きます。
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