「ビーバップ!ハイヒール」の森村泰昌先生による
フェルメール作品の解釈のお話はもう少しお待ちください。
なお、来週は疑似科学がテーマだそうで、
以前、私も攻撃した水素水も扱われるそうです。
私がプロ野球で特定のチームの応援をしなくなったのは、
それが他チームの選手の応援の妨げになるからで、
しかし、今年の阪神タイガースは、
また、阪神ファンに戻りたくなるようなシーズンとなっております。
今年、どれだけのプロ入り初勝利、プロ入り初ホールド、
プロ入り初安打、プロ入り初本塁打、プロ入り初打点などがあったことでしょう。
就任時、金本監督は「育てながら勝つ」を目標としました。
ファンからは数年は育てることを主路線にと理解を示す声も聞かれたものの、
「今はそんなことを言ってくれているけれど」として、
シーズンが進んでいくとファンは許してくれなくなる、
勝つことも必要だと監督は話していました。
それは、彼がこのチームで現役を終えるまでに、
骨身にしみていることなのでしょう。
経験が少ない選手は「悪いなら悪いなりに」が難しく、
不調が成績に直結する傾向があります。
今後も厳しい展開の試合が続くかと思いますが、
成果を上げた選手、
成果を上げそうな選手は使うという方針を見守りたいと思います。
金本監督を見ていて、意外といえば失礼ですが、
とても、選手を見ていると感じました。
ここまでは細かい気配りを感じます。
怠慢などには大声を上げることがあるものの、
選手を悪く言っている言葉を聞きません。
好不調の波が激しい江越外野手を2軍に落とした時には、
わざわざ視察に足を運び、
掛布2軍監督と彼について言葉を交わしています。
こういう姿は絶対に選手に伝わるもので、
降格しても見ていてくれる、
見捨てられていないと意気に感じるというもの。
それは、自分が怒鳴り声を上げた選手に対しても同じなんです。
昨年の秋季キャンプ初日、最初に新監督のカミナリが落ちたのは
当時育成枠の田面(たなぼ)巧二郎投手でした。
開始前に監督は「返事は大きな声で」と選手たちに訓示したものの、
田面投手は返事ができていなかったとのことで、
金本新監督就任初叱責は彼となりました。
2013年ドラフト3位でプロ入りした田面投手は
2014年終了時に育成選手契約となりました。
150km/hを超える速球が武器で、
藤川球児投手になぞらえられることもあった彼でしたが、
なかなかその才能が日の目を見ることはありませんでした。
その彼に力を発揮する機会が与えられたのは昨夜のことです。
原口文仁捕手も育成選手からチャンスを与えられた選手です。
2009年ドラフト6位でプロ入り、
2012年に腰を痛めてから、育成選手契約に。
翌年、腰の治療とリハビリを乗り越えて、
いざこれからという時に、居残り練習中のシート打撃で
投球を左手首に受け、骨折してしまいました。
その時の投手が田面投手でした。
お互い、育成の泥水をすすっている中で、
なんとか這い上がろうともがき続けていて、
そんな時に起きたこのアクシデント。
そのダメージは大怪我の原口捕手のみのものではありません。
この後、田面投手から最大の武器である速球が影を潜めてしまいました。
野球などのスポーツには「イップス」という言葉があります。
元は何らかの失敗の経験による精神的な衝撃により、
手が震えてしまうなど、ゴルフのパットが思い通りにできなくなることをいい、
今はスポーツ界全体で使用されています。
野球で最も知られているのが
死球により打者に怪我を負わせてしまった投手に起きるもので、
この時の田面投手はイップスに陥っていたといえるでしょう。
昨年の秋季キャンプでいきなり新監督に叱られながらも、
それを力に変えて支配下登録選手として復帰を果たした田面投手、
1軍昇格はほんの10日ほど前のことです。
昨夜、8回同点という緊張感あふれる場面で初登板を迎えましたが、
その時、マスクをかぶっていたのが原口捕手。
阪神では育成契約を経た者同士としては初めて、
全球団でも1軍ではまず見ない
背番号97の投手と94の捕手という大きな番号のバッテリーとなりました。
シート打撃で彼から投球を手首に受けた後、
原口捕手は何度も田面投手から謝罪されたそうです。
原口捕手が自分以上に苦労していることを知っている田面投手です。
この怪我が元で、球団が契約を切ってしまえば、
現役続行を断念しなければならない可能性もあるのです。
この後、原口捕手は怪我の治療とリハビリ、
田面投手はイップスを克服しなければならなくなります。
気にしないでください。僕も田面さんのストレートを楽しみにしています
当時、頭を下げる田面投手に原口捕手はそう返したといいます。
昨夜、初ホールドで大役を果たした田面投手。
2死2塁からのフィニッシュはインコース、
持ち味の威力のある直球による空振り三振でした。
ファームで組んでいたし、抑えられてよかった
そう話す原口捕手は捕球後、
これまでのように、ボールボーイにそのボールを渡しましたが、
慌てて奪うように取り戻しました。
このボールは田面投手へと渡ります。
田面投手は「いらない」と言ったものの、
原口捕手にとっては彼に渡さなければならない大切なボールだったのです。
田面さんの初奪三振だから
金本タイガースはルーキーを含めた若手を最大限に起用しています。
中でも原口捕手が象徴的で、
彼が支配下登録されたのは4月27日のこと。
即1軍昇格、この日代打で出場、マスクもかぶり、
初安打も記録しましたが、
新しい背番号のユニフォームが間に合わないため、
山田バッテリーコーチの背番号82を着用しての出場は、
大きな話題となりました。
支配下登録からまだひと月も経っていませんが、
今や、正捕手並みの大活躍、
若い選手を起用し貧打が悩みのチームの中で、
規定打席が足りないながらも、
3割を打てているのは彼だけです。
就任時、野手ではゴメス、鳥谷両内野手、福留外野手以外、
レギュラーは白紙としていた新監督ですが、
現在、そのレギュラーに最も近いのが原口捕手となりました。
「超変革」を掲げる金本新監督でなければ、
彼の活躍はなかったかもしれません。
自分が叱った選手も含めて、
掛布2軍監督との連絡を密にし、
選手たちをしっかり見ているからこそできることです。
田面投手が初登板初ホールドで藤川球児投手につないだ昨夜の試合は、
原口捕手のプロ入り初のサヨナラヒットで終わりました。
ベンチから飛び出した同僚たちが大量の水や清涼飲料水を浴びせます。
その輪の中には背番号97、田面投手もいました。
大量の水や清涼飲料水にまみれた原口捕手は、
ハイタッチしようと腕を突き出した金本監督に飛びつきます。
抱き合う選手と監督、
監督のユニフォームもびしょ濡れになってしまいました。
勝ち負け以上に、今年の阪神は泣かせます。
そして、仕事に差し支えます。
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阪神タイガース 原口捕手と田面投手サヨナラまでの物語 ~イップスを乗り越えたバッテリー~
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