この番組を見続けて、初めて、最初のブロックで
正解の病名が思い浮かびました。
昨年、この病気についていくつかお書きしたことがあったからで、
当て推量ではあるもの、少し感動しました。
この病気、医師でもその知識が薄い場合もあり、
当人にも自覚がなく、ただ悩んでいるだけの人も多いようです。
理解者が少なく、そのストレスからうつ病に至ることもあり、
自殺の可能性もあります。
こういう病気があるということを知ってさえいれば、
対処法はありますし、無用に悩むこともありません。
この病気の周知が必要であろうかと思います。
そこで、今回、こちらでもご紹介したいと思います。
多少のアレンジはしてあるでしょうが、
実際の症例の再現ビデオを見ながら、
その病気の病名を考えるというこの番組、
今回は自宅で義母の介護をしている女性が患者でした。
患者とはいえ、今回のドクターG、
室蘭市本輪西ファミリークリニックの草場鉄周院長は、
家庭医として、彼女の義母の訪問診療で、
自宅を訪れており、その際に今回の患者の異変に気づいたとのこと。
草場先生が仰るには、
訪問目的の診療以外にも、
家族全員の様子を見ることは家庭医として必要なことなんだそうです。
特に家庭で介護が行われているならば、
介護者である家族の健康が損なわれていては、
介護にも影響が出てしまいます。
今回の患者、吉田蘭さん(仮名52歳)は介護疲れもあり、
勤め先では彼女がいなくては現場が回らないような責任のある立場で、
さらに、長男が短期間で就職先を退職していて、
多方面からのストレスを受け続けている状況でした。
吉田さんは締め付けられるような頭痛に悩まされ、
全身の倦怠感、脚の痺れ、不眠などから、
この日の前日と前々日は出勤も不可能でした。
この状況から、介護うつが考えられ、
彼女自身も4日前に心療内科の診察を受けています。
そして、2種類の内服薬を処方され、
それを服用すると、よくなるどころか、
逆に眠れなくなり、脚の症状は痺れから痛みに変わりました。
ここで草場院長は彼女に夫を伴ってのクリニックでの診察を勧めます。
そして、眠れない時には
「好きな音楽を聞いてみてください」というアドバイスを行いました。
むずむず脚症候群が彼女の最終診断でしたが、
彼女は心療内科を受診していても、
その医師がそれに気づくことはできませんでした。
医師の中にも、この病気に対する理解が進んでおらず、
ほぼ確実に診断できるのは、
神経内科か、睡眠障害の専門医ぐらいだともいわれています。
そもそも、原発のうつ病だとして、
薬を処方していた心療内科医でしたが、
それはむずむず脚症候群を悪化させる薬でした。
むずむず脚症候群が原因で、抑うつ症状が出ていたなら、
まず、むずむず脚症候群をなんとかしないといけません。
むずむず脚症候群は脚などがむずむずするような感覚に襲われ、
じっとしていられなくなる症状が現れる病気です。
脚などとしたのは、これが腕や全身に現れることもあるからです。
そして、むずむずといった感覚だけでなく、
痺れや痛みを感じることがあり、
これは患者本人しかわからないことだけに、
その表現は千差万別です。
その症状は就寝時などの安静時に現れやすく、
それが不眠症などの睡眠障害を招き、
うつ病などの精神疾患に至ることがあります。
就寝時など、安静にしている時に症状が現れるのは、
人間の感覚情報の処理方法に関係があります。
人間の脳には、常に全身からの信号が送られてきており、
いちいち、左足の小指が床に当たっているとか、
右肘に風が当たったなど、信号全てが脳に送られますと、
脳は情報を処理しきれなくなるため、
関門を設けて、必要性の高い情報のみを通すようにしています。
しかし、何らかの理由で、
この関門が正常に機能しなくなると、
普段はシャットアウトされていた不快な感覚が、
直接、脳に届けられてしまい、
脚などが不快に感じるようになります。
むずむず脚症候群の患者でも、
昼間などの活動時に症状が出にくいのは、
そういった不快な信号よりも、
強い信号が常に送られ続けているからで、
草場院長が就寝時に音楽を勧めたのは、
音の情報を脳に与え続けることで、
不快な情報からの影響を抑制しようとしたからで、
この患者の場合、これで少し眠れるようになったようです。
むずむず脚症候群の推定患者数は5パーセント程度で、
つまり、20人のうちに1人ぐらいはこの病気だということになります。
全く周知されていないこの病気ですが、
当人が気づいているかどうかは別にして、
多くの人を悩ませている病気なのです。
根本的な原因は不明ながら、
鉄分の不足との相関関係が指摘されていますので、
鉄分の積極的な摂取が勧められてます。
また、就寝前の体操やストレッチなどもよいとされています。
この病気を抱えつつも、多くの患者がその治療を受けずに、
不眠と戦わねばならなくなっているようです。
・脚などに不快感がありなかなか寝付けない
・すぐに目覚めてしまう
・日暮れぐらいから脚の不快感が増す
・その不快感は歩くと軽減される
・座って静止していると、じっとしていられない
現在は症状を改善させる薬がありますので、
これらに心当たりがある方は、
神経内科か、睡眠障害の専門医の受診をお勧めします。
念のために、むずむず脚症候群であるかもしれないと告げてください。
できれば、草場院長のアドバイスのように、
同居人など、就眠時の様子を知っている人がいれば、
同行するとよいでしょう。
医療機器による診断が行われることもありますが、
まずは問診が大切で、
客観的に症状を伝えづらいこの病気では、
就眠中に周期性四肢運動という
いずれかの脚や腕が周期的に動くという症状があり、
そういった確認のために、
就眠時の様子を知っている人の話も診断の重要な材料となります。
世の中には命に関わる病気がたくさんありますが、
むずむず脚症候群も、不眠などの苦しみから自殺に至るケースもあり、
これも命に関わる病気といえます。
自殺に至るには、この病気への無理解も関係しています。
ご本人ではなくても、
こんな悩みをお持ちの方がいらっしゃいましたら、
この病気を思い出してください。
頭のどこかに、こんな病気があることを
ぜひ、憶えておいてください。
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