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無痛分娩でリスクは上昇しない ただしシステムに問題がある

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鈴ノ木ユウさんの「コウノドリ」10巻で無痛分娩が扱われていた時に
私も調べてみたことがあります。
その時の結論は無痛分娩が必要な妊婦がいること、
ほとんどの妊婦が麻酔を使用しない分娩と
無痛分娩のいずれかの選択が可能であるというものでした。



「コウノドリ」では心機能の問題で無痛分娩と決まった妊婦「山崎さん」が
既に母親になっている友人から
無痛分娩で生んだ別の友人について

「楽して産んで、母親になろうって方が甘いのよ。
母性もおっぱいも出ない出ない」
「赤ちゃんより自分の方が大切なんじゃないかな」
病気などで無痛分娩でないと母胎が危険な妊婦については
「しようがない」「カイワソウ」とし
「自然に産んだ母親の愛情には絶対に敵わないもん」

と言います。これは目の前の「山崎さん」が
心疾患により無痛分娩を行うことを知らずに話していることですが、
鈴ノ木さんは、世間一般の無痛分娩に対する認識の象徴として
この場面を設けたのだと思います。
友人の言葉に動揺した「山崎さん」は
麻酔なしでの出産ができないものかと産科で相談しますが、
その言葉に対し、主人公の産婦人科医鴻鳥サクラは

もちろん予定通り無痛分娩にします
山崎さんの出産に麻酔は必要ですから


と告げ、

妊娠・出産は一人一人違いますし
考え方もそれぞれです
自然に出産する人もいれば
自分から希望して無痛分娩で出産する人もいます
僕は正直どっちを選んでもいいと思っています
ただその選択に他人がどうこう言うのは間違いです
ましてや山崎さんは心疾患合併で
出産には麻酔が必要です
僕は産科医なので
その友人のバカバカしいデタラメ話のせいで
二つの命を危険にさらすことは絶対にできません!
無事に出産を終わらせる
それが僕らの仕事なんです


と説明しました。
主人公は続けて
自然分娩でも無痛分娩でも帝王切開でも
母乳が出る人は出る、出にくい人は出にくいと話し、

母性や愛情は赤ちゃんが教えてくれますよ

産科に限らず、この種のデマは非常に多く
それも善意で広まるものですから質が悪いです。
去年ぐらいから
「帝王切開で生まれた赤ちゃんに自分の膣の分泌液を塗るといい」
などというデマが広まっています。
発信元は英国やオーストラリアあたりだそうで。

帝王切開だと産道を通過していないから
そこで得られたはずの免疫力を赤ちゃんにという話らしいですが、
最悪の場合、感染症で赤ちゃんが死にます。
こんな危険な方法について
「賛否両論」などとしているサイトが多いことにも驚きです。


ここ数ヶ月、無痛分娩での事故の報道が続きました。
2012年11月、京田辺市の「ふるき産婦人科」において
ロシア人女性が無痛分娩の麻酔後に意識不明になった件で
夫らがこの産婦人科を相手に損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしました。
「ふるき産婦人科」はほかの無痛分娩において
母子が低酸素脳症になるというケースでも訴えられています。
ロシア人女性の件では赤ちゃんも命こそ取り留めましたが
お母さん同様、意思の疎通できません。

この"被害者"の女性の母はロシアの医師です。
だからこそ、全ての妊婦に警告を発したといいます。
その警告とは

ただ1人の産婦人科医しか働いていないような個人医院で出産すること

が危険だというものです。
現在、世界的に無痛分娩で赤ちゃんが生まれるケースが増えていますが、
世界基準では産科医1人のみの無痛分娩はあり得ません。
無痛分娩は麻酔を用いた分娩ですが、
麻酔という行為自体が危険を伴うものです。

JIN -仁- その背景 華岡青洲 華岡流麻酔術 通仙散
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-10411012340.html

こちらにもお書きしたように
医師は国家試験に合格することで
どの診療科でも標榜することができます。
ただ、麻酔科医は特殊で

「麻酔指導医のもとで2年間以上麻酔に専従した者」
「全身麻酔を2年以上にわたって300例以上実施した者」

として厚生労働省の認定が必要です。
ほんのわずかな認識の誤り、判断ミス、
手技のミスなどが生命に直結するからでしょう。

ところが「ふるき産婦人科」のように
日本では産科医1人が麻酔から全てを行うことが可能になっています。
麻酔科でなくても、他の科の専門性は
医師だからといって全てに通じているわけではありません。
科が違えば、その医療行為は当然違ってきます。
体を鍛えているスポーツ選手で喩えれば
野球選手が体操競技を行うぐらいの違いがあるのかもしれません。
特殊性の高い麻酔科ならなおさらです。

データを見る限り、無痛分娩が危険ということはありません。
ただし、それも充分な体制が整っている医療機関であることが条件です。
日本では肩書きで
「麻酔に習熟している産科医」かどうかわからないことがほとんどですので
麻酔科医が麻酔を行ってくれる医療機関がいいでしょう。
実際のところ、産科医同様、
麻酔科医も慢性的に不足しています。
「コウノドリ」では院長が妊婦希望による無痛分娩の開始を考えますが、
四宮医師と麻酔科医が反対する中、
鴻鳥医師は賛成します。
院長の意見を讃えつつ

産科医と麻酔科医
そして助産師の人員を今の倍に増やすつもりなんですから


と条件を付けています。
現実の医療機関でもこんな人員増は不可能だと思います。
無痛分娩を希望される方がいらっしゃいましたら
麻酔科医に麻酔を担当してもらえるかどうか、
あるいは、実績などを質問されるとよいかと思います。

実際には麻酔の知識、技術に通じておられる産科医もいらっしゃいます。
順天堂医院のように産科麻酔外来のような部門を設けているのでなければ
それを見分ける手段があまりないので、
今後、専門医制度などが必要だと思います。

また、日本では産院での分娩も多く
特にそういった医療機関は医師の数が少ないです。
しかし、大病院も全ての妊産婦を
受け入れられるような余裕はありません。
自然分娩にも一定のリスクがあり、
適切な人員で管理された無痛分娩のリスクも差はないと思います。
ただ、こういった制度上の問題があるのも事実です。

最後に日本産科麻酔学会のサイトの
「無痛分娩Q&A」のページをご紹介しておきます。

http://www.jsoap.com/pompier_painless.html

ただ、このサイトの中の「無痛分娩施行施設の紹介」のページには
実績面において、事故があった産院も含まれているとのことですので
注意が必要です。






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