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「約束の地」エルサレムと世界がさらなる混沌に トランプ政権の自爆

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日本のテレビでは特に何か新しい情報を得たわけでもないのに
相撲界の問題ばかりを憶測で扱っていますが、
この問題は北朝鮮問題よりも深刻で
影響が大きくなる可能性もあるだけに
日本国民もこの問題の重大性を認識しておく必要があります。

アメリカ・トランプ政権がイスラエルの首都をエルサレムと認定しました。
米はこれまでテルアビブに大使館を置いていましたが、
大使館をエルサレムに「移転」すると発表しています。

米は1995年、99年までに在イスラエル米大使館を
テルアビブからエルサレムに移す「エルサレム大使館法」を制定。
しかし、以後歴代大統領はその影響の大きさから
半年ごとに先送りを続けてきました。

元々、同法が制定されたのは
ユダヤ系ロビイストたちの活動によるものですが、
トランプが大統領になったのは彼らの力によるものが大きく
支持率低迷の逆転を狙い
この「移転」を決断したものと思われます。

「移転」とはいうものの、正確には看板の付け替えです。
各国大使館は首都に置かれるもので、そのほかの在外公館が領事館。
大阪の北区西天満には米国総領事館がありますが
大使館は東京・港区赤坂です。
現在のイスラエル・エルサレムには米領事館があり
これから、ここを大使館とすることになります。
テルアビブの大使館は今後、領事館となるのでしょうか。

火種に油を注いだのはトランプ政権ですが
その代償は中東各国、米、世界が負うことになるかもしれません。

元を辿れば英国の三枚舌外交にあります。
第一次世界大戦でオスマン・トルコと戦っていた英は
アラブ社会を味方にするため
パレスチナを任せるとして約束したにもかかわらず、
翌年にロシア、フランスに共同管理を約束、
さらにその翌年には
建国を悲願としていたユダヤ人にイスラエル建国を約束しました。

現在のこの地域の複雑さを生んだのは
この場当たり的な英国の対応にあります。
英は責任を取りません。
さらに溯れば、イスラエルは聖書に記された「約束の地 カナン」でした。
ユダヤ人たちは2000~1900年前までにローマ帝国に敗れ
世界中に離散、ディアスポラと呼ばれる離散ユダヤ人となります。

ヤハウェはユダヤ人に
地中海とヨルダン川、死海に囲まれた
「カナンの地」を与えると約束していた訳ですから
エルサレムこそその地であり、
首都とするのは当然だと考えています。

一方、イスラエル建国までにその地に住んでいたのはアラブ人で、
2000年間住んでいた土地を奪われた彼らが納得するはずはなく、
これが現代の「パレスチナ問題」となっています。

エルサレムという都市は
「アブラハムの宗教」それぞれの聖地でもあります。
アブラハムの預言から始まったユダヤ教は
後にキリスト教とイスラム教を生み出しました。
ソロモンの神殿の城壁跡とされる「嘆きの壁」はユダヤ教の聖地、
イエスが十字架に磔にされたゴルゴタの丘跡地
「聖墳墓教会」はキリスト教の聖地、
ここから天にのぼって神の声を聞いたとされる
「岩のドーム」はイスラム教の聖地です。

ずっとこの地には紛争の火種がくすぶっていました。
第一次中東戦争、第二次中東戦争、第三次中東戦争、
そして、停戦後も続いた消耗戦争、
第四次中東戦争はいずれも
イスラエルと周辺アラブ国家との間で起きた戦争です。

日本にも中東情勢は大きな影響を与えています。
第一次オイルショックは
イスラエルの占領地からの撤退を求めたアラブ石油輸出国機構が
イスラエルを支持している米などの国への経済制裁しようと
原油生産を制限したことにより起きたもので
第二次オイルショックはイラン革命から石油不足になっており、
国内の物価高騰などを招き、国民はパニックに陥りました。

現在でも、エネルギーの多くを中東に頼っている日本。
彼の地でまた、戦争が起きれば
同様の事態か、それ以上の悪影響を受ける可能性もあります。
大使館の件は、日本が米の軽挙に付き合う必要はありません。
在イスラエル日本国大使館はテルアビブのままにしておくべきで
実際にそうなると思います。
ただ、それ以外でも、身の振り方が大切となります。
イスラエルかアラブか、
どちらに味方するかを選択しなければならない日が来ないとはいえません。
戦争に巻き込まれる可能性だってあるのです。

この件で、笑うのはロシアと中国でしょうか。
ISの暴風が吹き荒れる中、
ロシアは中東での影響力を強めており、
中国は経済面で莫大な投資を行っていて、
従来は米が最大の投資国でしたが、
今では中国がトップです。

これで、米は中東での発言力が大きく低下することでしょう。
アラブ諸国は米のいうことを聞かなくなります。
形の上だけとはいえ、
中東和平の仲介役だった米。
それが一方のみの肩を持った訳ですから、
アラブが聞く耳を持つはずはありません。
その発言力低下は、トランプ政権の力を弱めるでしょう。
これまでもトランプ政権は軽挙を繰り返してきましたが
これが最大の過ちといえるでしょう。

アメリカファーストを掲げて当選したトランプ大統領。
この件ではトランプファーストともいわれています。
ただ、この過ちというものが世界に対してだけでなく、
トランプ政権そのものの首を絞める要因となるかもしれません。

北朝鮮危機が目前の問題であることは間違いありませんが、
事実を認識するにおいて、事態は単純です。
一方、この「エルサレム」問題は
北朝鮮危機のように、
誰かを排除すれば話が終わるような単純なものではありません。
既にガザ地区からのロケット弾発射があり、
イスラエル軍は反撃。死者が出ました。
もう武力衝突は始まっています。
米国人、またはその可能性がある人は襲撃される可能性があります。
テロリストたちは、口実ができて喜んでいるかもしれないのです。



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