度々お書きしている子宮頸がんワクチンに対するデマの問題。
先月末、大きな動きがありました。
しかし、そのことを報じる既存メディアはほとんどありません。
医師でジャーナリスト、
京都大学大学院医学研究科非常勤講師である村中璃子氏が
「ジョン・マドックス賞」を受賞したのです。
この賞は英国の科学誌「ネイチャー(Nature)」が主催。
ジョン・マドックス氏は長年同誌の編集長を務めた人物で、
公共の利益に関する科学の情報を広めるために
障害や敵意にさらされながらも貢献した人に与えられるもので
「科学界のピューリッツァー賞」という喩えも見られます。
今回が6回目で日本人の受賞は初めてとなります。
この賞の特色は「障害や敵意にさらされながら」という部分にあり、
たとえば、前回の受賞者のエリザベス・ロフタス氏は
「偽りの記憶」が評価されましたが、
彼女は「子どもを虐待している」と非難され脅迫も受け
生活にボディーガードを雇わなければならなくなりました。
村中先生もこの問題を採り上げ続けたことで
ご家族とともに「山のような脅迫」にさらされることとなります。
情けないことに、あまりにも情けないことに
この受賞を報じる既存メディアがほとんどありません。
国内大手では産経が採り上げましたが
ジョン・マドックス賞に日本人医師 村中璃子氏、子宮頸がんワクチン問題について発信
http://www.sankei.com/life/news/171202/lif1712020043-n1.html
ほとんどの人が気付かないような小さな記事で、
中身も何の賞なのかろくにわからないものとなっています。
ニュースサイト「BuzzFeed Japan」に
岩永直子さんという方がいらっしゃいます。
先日、彼女のtweetを見ていて悲しくなりました。
彼女は読売新聞社会部から「ヨミドクター」編集長となり
医療関連の情報を扱ってきましたが
子宮頸がんワクチンの正しい情報を掲載したところ
社外からだけでなく、社内からも攻撃されたそうです。
それで原稿が削除され、異動が命じられたことで退職されたそうです。
おそらく、その頃の記事だと思います。
【子宮頸がんワクチン特集】ワクチンで防げる悲劇を見過ごしていいの?
https://megalodon.jp/2016-1228-0911-25/https://yomidr.yomiuri.co.jp:443/article/20160823-OYTET50014/
岩永さんの署名のある記事の魚拓です。
読売新聞社の医療系情報を扱っているのが
「ヨミドクター」で
朝日新聞社の場合は「アピタル」ですが、
「アピタル」でも似たような話があるようです。
既に今回のジョン・マドックス賞受賞に対し、
反ワクチンサイドの反撃が始まっていますが
どうやら、これまで私が思っていた以上に
反ワクチンは権力を持っているようです。
ただ、メディアは普段から
「言論の自由」「報道の自由」の侵害に強く反応してきました。
しかし、子宮頸がんワクチンの件では
そういった連中の圧力に屈していることになります。
彼女の子宮頸がんワクチンに関する記事で特に際立っていたのが
子宮頸がんワクチン薬害研究班に捏造行為が発覚
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7080
この記事と
脳の症状、免疫関与か - 子宮頸がんワクチン研究班
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7124
その続報でしょう。
ここで当時の池田修一信州大学教授で副学長、医学部長らが発表した
子宮頸がんワクチン脳に障害を起こすという論文を捏造だとしています。
村中先生の取材のとおりであるなら、
明らかに「既定の結論を得るための捏造」が行われたことになります。
これに対し池田教授は名誉毀損で彼女を訴えました。
もしも、ワクチン接種と脳の障害に因果関係があるなら
実験に関する客観的に検証しうる記録を示せばいいだけのはずなのに
彼は科学とは別の場所に彼女を引っ張り出したのです。
彼の弁護士は
「争点は、子宮頸がんワクチンの科学の問題ではなく、
捏造という表現の問題だ」と主張。
この弁護士も薬害訴訟ではおなじみの人物で
裁判官を含む印象操作が得意な人物。
「被害者」を囲い込んで、
まともな医療機関による診察や治療を受けさせないことに加担しています。
治るものも治るはずはありません。
被害者連絡会も「治った」という報告をすれば
良くて除名、その情報を広めようとすれば
誹謗中傷の嵐で脅迫もされます。
ジョン・マドックス賞受賞スピーチ全文「10万個の子宮」
https://note.mu/rikomuranaka/n/n64eb122ac396
ご覧になればおわかりになるかと思いますが
ここで子宮10万としているのは
毎年子宮頸がんの治療を受ける患者が1万人で
そのうち3,000人が亡くなっており、
国家賠償請求訴訟には10年を要し
その間、厚労省の弱腰が変わらないとすれば
10年で子宮10万が摘出されるという意味です。
そして、その間、3万人が亡くなります。
子宮体がんは閉経後に多く見られるがんですが、
子宮頸がんは20代から増え始めます。
そのことから、頸がんは患者自身の命と
その患者が妊婦なら胎児の命、
そして、将来生まれるはずだったかもしれない子どもの命を奪います。
実際のところ、ワクチンで防げる頸がんは全体の3分の2余り。
それでも、1万人のうち7,000人近くは頸がんにかかりませんし
妊娠中と将来の赤ちゃんを諦めずに済みますし
3,000人のうち2,000人は死なずに済むのです。
村中先生のジョン・マドックス賞受賞は
世界各国のメディアが採り上げています。
中国、韓国のメディアも報じました。
日本はどうでしょう。
この受賞は姿勢を改める機会にすることができます。
メディアが真実を報じないということは
情報が届いてさえいれば防げたはずの年間2,000人の女性の死も
仕方がないと考えていることになります。
二重三重以上の悲劇に見舞われても
各社は仕方がないと考えていることを示しています。
この件で「報じない自由」を行使するということは
人権なんて考えていないということです。
「報道の自由」「人権」はメディアが好きな言葉ですが
これが日本のメディアの現実です。
子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウイルスにはたくさんの種類があります。
そのうち、3種に対応するワクチンが日本で接種されていたものの、
厚労省が積極的接種を勧めなくなったものです。
世界では9種のウイルスに対応するワクチン接種が始まっていて
より高い予防効果が認められています。
日本でこのワクチンを使用できる日が来るのか?
天然痘のように、世界では子宮頸がんが過去の病気になる可能性があります。
その頃、日本では相も変わらず、大勢の女性が
子宮頸がんによる悲劇に見舞われ続けることになるかもしれません。
たからこそ、こんな日本の対応を
WHO(世界保健機関)、CDC(米疾病対策センター)、米国小児科学会など
多数の機関、学会が非難しているのです。
受賞間もなく、村中先生は講演のために登壇されました。
ところが、この賞のことを話すのはNGで
NHKが取材に来ていたようですが
「使わないけれど」という前提付き。
それなら、なぜ撮影するのかという話ですが、
先生は「もしも勝手な編集をして放送すれば訴える」と警告したそうです。
そうしないと、反ワクチンに利用される恐れがあるからです。
この問題を形にして訴えるのは難しいようで
なかなか書籍化されません。
来年2月、平凡社から新刊が発売されることになりました。
10万個の子宮
あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか
http://www.heibonsha.co.jp/book/b335507.html
考えてみればドラマ版「コウノドリ」で
この問題に触れていたのは
想像以上に危険な行為だったのかもしれません。
この受賞に当たって東洋経済によるインタビュー記事はこちらをご覧下さい。
「医師とメディア人」二足のわらじを履く理由
あの英誌「ネイチャー」が選んだ日本人女医
http://toyokeizai.net/articles/-/199503
子宮頸がんワクチンの副反応だと騒がれた不定愁訴は
ワクチンを接種していなくても見られるものです。
騒動の当初から小児科医たちは知っていました。
それをメディアが無視し続けていたに過ぎません。
名古屋市のデータを見れば
因果関係どころか、相関関係すら見つけられないのです。
¥108 Kindle版
Amazon.co.jp
ワクチンは怖くない (光文社新書)/岩田 健太郎
¥799
Amazon.co.jp
ワクチンは怖くない (光文社新書)/岩田 健太郎
¥799 Kindle版
Amazon.co.jp