第2回も面白かったですね。
「なぜお祝いに“胡蝶蘭”を贈るのか?」で、
ランの特殊な生態を紹介。
はじめはハンマーオーキッドなど、
ほかの番組でもおなじみの変わったランが紹介され
やや興味を失いかけましたが
後半は知らない話ばかりで素晴らしかったです。
第3回は「“金縛り”はなぜ起きるのか?」で、
これも手垢の付いたテーマですが、
ヘウレーカな内容になるか期待しています。
https://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-12367548117.html
前の記事では植物がコンクリートのスキマなどに生えているのは
そこが生存に有利だからであるというお話をお書きしました。
番組後半では特にオオバコに注目した内容となっていて
まず目を惹いたのがゲスト研究者の山田駿佑さん。
山田さんは14歳です。
この動画でリクガメが食べているのがオオバコですね。
野山にもありますし、街中でもよく見られます。
山田さんが小学4年生の時、
コンクリートのスキマにオオバコがたくさん生えていることに気付き、
1年間かけて近所のオオバコを観察。
その成果をまとめたところ
全国の小学生を対象にした自由研究で
最優秀賞を受賞しています。
まず端よりも真ん中のほうが多いということに気付いたのが素晴らしいです。
私を含めて、日本のほとんどの人がそんなオオバコを見ているはずですが
そのことに気付いた人は少ないでしょう。
彼は舗装されていない10本の山道に45cm×60cmの枠を当てて
左外、左端、中央、右端、右外のそれぞれで
どれだけのオオバコが生えているかを数えました。
すると、左外と右外の40倍、
左端と右端の4倍多く中央に多くオオバコが生えていることを確認。
中央は人に踏まれやすい場所です。
植物には不利な場所に見えますが、
不利だからこそ、競争相手がいないという利点もあります。
競争相手がいないということも
ある種の「スキマ」なのでしょう。
このオオバコのスキマ戦略についてさらに考えた山田さんは
道の中央に生えることで受ける不利益を検証。
オオバコは踏みつけられることに強いのではないかと考えたのです。
彼はホームセンターなどで売られているような漬け物石を持ち、
プランターで育てたリュウノヒゲ、ノースポール、
オオバコに押しつけ続けました。
10週間もすればリュウノヒゲとノースポールは枯れて跡形もなくなりましたが
オオバコは衰えるどころかさらに大きくなっていました。
オオバコの構造は極めて頑丈らしく、
水や養分の通り道である葉脈は厚い繊維質に守られ
葉っぱそのものがちぎれかけても
葉脈は繋がったまま。
さらに彼は根が太く強く、
踏みつけられても茎から新しい葉が生えてくるとしています。
彼が気付いたオオバコのスキマ戦略はこれだけではありません。
彼は雨の日にオオバコのタネが
ゼリー状の粘液に覆われていることに気付き
その意味を考えました。
小4の彼は手に靴を履き、当時の歩幅を再現しながら
タネがどこまで運ばれるかを検証。
すると、最大で1km先まで靴により運ばれるという結論が得られました。
私が思うに、こういうできるだけ遠くに運ばれたいという戦略は
球根性とは正反対の考え方かと思います。
球根は栄養の塊でもあり高い確率で発芽します。
ただ、移動が起きない球根性は「親」のすぐ側で発芽して
そこで成長しなければなりません。
「親」にとっても「子」が側にいれば
土地などから得られる栄養は減ってしまいます。
「親」も「子」もお互いライバルですから
遠くで発芽したほうがよいというのが
オオバコのようなスタイルになります。
オオバコは踏まれることで人間などの動物に付着し
タネが運ばれていきます。
踏まれることはオオバコにとって利益でもあったのです。
番組で紹介された賞そのものではないかもしれませんが
PDFで山田駿佑先生の研究を見ることができます。
非常に面白いので、是非ご覧ください。
オオバコはなぜ道のまん中に生えているのか?
http://sainou.or.jp/contest/science/50/todouhuken/4.pdf
番組は続きます。
東京大学大学院教授の塚谷裕一先生によれば
日本各地の神社仏閣で
一般的なオオバコよりも小型のオオバコが見つかっているんだとか。
なぜ、神社仏閣のオオバコは小さいのでしょうか。
宮城県の金華山は神域で神の使いであるシカがいます。
本土から連れてこられたシカが繁殖しており
食欲旺盛なシカは植物性のものなら何でも食べてしまいます。
きっとオオバコなどはご馳走なのではないでしょうか。
この金華山のオオバコはわずか2cmほどの大きさしかないとのこと。
小さいことで食料としての魅力を薄れさせ
見つかりにくくし、
さらにシカは鼻先を地面に押しつけることを嫌いますので
このような姿に進化したものと考えられます。
こちらは滋賀・三井寺。
ここにも小型のオオバコがいます。
ただし、境内にシカはいません。
どうやら「神社仏閣型オオバコ」というものがあるらしいです。
神社仏閣の中でも特に長い歴史の由緒ある神社仏閣に限って
オオバコは小型化しているとのこと。
こういう場所は僧や宮司、地域の人たちによる清掃の頻度か高く
その時に「雑草」は抜かれてしまいます。
つまり、シカや人間の存在に対応したオオバコが
矮小型へと進化しているのです。
関連の論文を京都大学のサイトにありました。
ご興味がございましたらご確認ください。
オオバコの種生態学的研究 - 神社仏閣境内における矮小型オオバコの成立
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/185492
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