昨日、板門店にて、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の間で首脳会談が行われました。日本でも、北朝鮮の非核化への期待を掲載するメディアがありますが、現時点で不透明ではあります。金正恩が予め用意していた冗談の中に「平壌冷麺」の言葉があったことから、この料理がどういうものかを紹介しているニュースメディアも。脳天気な話です。
あの会見を見たトランプ政権は、より一層金正恩を排除したくなったのではないでしょうか。これまで私は彼を小賢しいと思ってきましたが、どうやら相当に賢しいようです。しっかりと損得勘定ができる人物、心中を隠しその時点で必要な感情表現ができる人物であることがわかります。しかし、彼を排除する理由を失ってしまいました。
それぞれの国益、北に関しては現政権にとっての利益ですが、その観点で見ると、この会談の私の採点は金正恩が100点、文在寅は5点です。それぞれの対米、対日などは別にして、今後、南北で交渉が行われると思いますが、あの始まり方だと、韓国は北に国益や世界の安全保障にとって、必要な要求を行えるかどうか疑問を抱かざるを得ません。
非核化についての文言も「朝鮮半島の非核化」であって、「北朝鮮の非核化」ではありません。韓国は日本と同様に、自国は核兵器を持ちませんが、核の傘の下にあります。「朝鮮半島の非核化」ということであれば、韓国は核の傘から出ることになり、防衛力は大きく低下します。こんな文言になったことについては、北の核廃絶は、米との交渉材料ということで、韓国とは交渉しないということでもありす。
仮に北が検証可能な核兵器の放棄を行ったとしても、ここまでに積み上げてきた技術を捨てさせることは不可能です。他国に流出する懸念もあり、さらに、再度の核武装だって難しくないでしょう。その時、韓国はどうするのでしょうか?
加えて、ずっと気になっているのが、拉致問題。日本の拉致問題も重要ですが、韓国国民も拉致被害に遭っており、その数は日本とは桁が違います。しかし、この問題を韓国が解決しようとしている様子は見られません。これは現政権だけでなく、ずっと、まるでなかったことのように、世論の声もあまりないようで、あまりにも冷淡です。
韓国にとって、誰が拉致被害者で、誰が北への亡命者で、誰が朝鮮戦争が絡んでの未帰還者なのかの区別が難しいかもしれません。ただ、数千人の国民が自由を奪われ、連れ去られたままになっているのであれば、奪還のための動きがあってしかるべきですが、今まで、ただの一度も、それらしき動きはありません。
もしも、韓国側が「拉致被害者を返せ」と北に要求した場合、北は「脱走した犯罪者を引き渡せ」などと要求してくるかもしれません。脱北者は北では政治犯なのでしょうから、あり得る話です。もちろん、いくら文政権でも、人権を無視して引き渡すとは思えませんが、北の要求を毅然と突っぱねられるでしょうか? その上で、「拉致被害者を返せ」と北に要求できるでしょうか? 金正恩とは逆に、したたかさなどかけらも感じさせない文在寅に。
「同じ民族だから」のみが強調された首脳会談でしたが、事実上、2つに分かれた国と国です。国家間交渉では、自国の利益のために相手国にとっての不利益を要求する必要もあります。拉致被害者や脱北者の問題だけでも、親北の文政権には期待薄なのに、今後の朝鮮半島情勢を楽観視できるはずはありません。
一部、日本国内にも金正恩はいい人かのような評価をし始めている人がいるようですが、忘れてはいけないのは、彼が高射砲の水平射撃で気に入らない側近をバラバラにして処刑し、兄を国外で毒殺、現在、存命している政治家の中で、最も冷酷な人物でしょう。文在寅とは役者が違いすぎる金正恩です。「同じ民族だから」で解決できることなど全くないか、あってもほんのわずかに過ぎないでしょう。
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