「チコちゃんに叱られる!」では、
見方により説明方法が複数ある場合が多いですね。
チコちゃんは言い切ってしまいますけれど
ほかの観点での説明を考えるのも楽しいかと思います。
さて、こちらでは前回の放送から
大人になるとあっという間に1年が過ぎるのはなぜ?
を採り上げます。
何でも知っているチコちゃんは
人生にトキメキがなくなったから
としました。解説は
千葉大学文学部行動科学科心理学講座の一川誠教授でした。
先生はそのままズバリ
大人の時間はなぜ短いのか (集英社新書) 756円 Amazon |
という書籍を発表されていますね。
このテーマの元ネタでしょうか。
一川先生によれば、
心が動いている度合い、
トキメキにより時間の感覚は変化するといいます。
トキメキが多ければ、過ぎた時間を長かったと感じ、
トキメキが少ないと、過ぎた時間を短かったと感じるようになります。
たとえば、夏休みの宿題などでもお馴染みの朝顔。
大人は朝顔がどのように発芽して成長していくかを知っていますが、
子どもたちはその変化やその時々の姿に感情が動かされることになります。
先生が言うところのトキメキが多いということになります。
私はこの問題がチコちゃんから提起された時、
「経験量の違い」だと考えましたが
概ね、一川先生の解説と重なります。
ただ、もう一つ思い浮かべたことがありました。
ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書) 734円 Amazon |
1992年の書籍で自然科学の本としては珍しく話題となり
大ベストセラーになりました。
著者は現在、東京工業大学名誉教授の本川達雄先生で
ご専門は動物生理学。
シンガーソングライターでもあるそうです。
そういえば、当時、テレビで歌ったおられたような記憶があります。
この書籍関連ではこんな曲を発表しておられますね。
ゾウの時間ネズミの時間 ~歌う生物学~ 2,354円 Amazon |
表題の「ゾウの時間 ネズミの時間」ですが、
ゾウもネズミも生涯における心拍数は
ほとんど変わらないという点から始まります。
哺乳類の場合、
15~20億回程度の拍動で心臓は使命を終えるわけですが
寿命は種により大きく違っています。
ネズミでは約4年、ゾウでは約60~70年、
100年近く生きる場合もあり十倍以上の差があります。
これは変温動物と恒温動物、
恒温動物の中でも鳥類と哺乳類では差が見られますが
概ね、体重と寿命は比例しているとのこと。
それだけネズミの心臓は忙しく動き、
ゾウの心臓はゆっくりと動いているわけで、
どちらも寿命の体感時間は同じだとすれば
これを本川先生は、
ゾウにはゆっくり時間が流れていて
ネズミには早い時間が流れているとしています。
種それぞれの寿命の体感時間は確認しようがないので
半分ぐらいは比喩的表現ともいえますが、
この本を読みながら、私は成長過程での心拍はどうなのか、
特に人間の一生ではどうなのかを考えました。
出生時の私たち人間の1分間の心拍数は140~180、
生後1日、2日もすれば100~120となり、
幼児期には100~110、成人は70~80、
高齢者は60~70と、
生涯の心拍数にはかなりの変化が見られます。
時計につけられた目盛りが示す時間は絶対ではなく、
それぞれの生物種、あるいは活動量、
幼体か成体かなどによって違っています。
この観点から
大人になるとあっという間に1年が過ぎるのはなぜ?
を考えてみても、その理由が説明できるかと思います。
本川先生の講演をJ-STAGEで見つけました。
こちらは新しく、
どうやら「第40回日本高次脳機能障害学会学術総会」での講演らしいです。
失語症関連の学会でしょうか。
ゾウの時間・ネズミの時間・現代人の時間
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/37/1/37_1/_pdf
ついでに一般財団法人 コンピュータ教育推進センターなるサイトにも
ゾウの時間・ネズミの時間・コンピュータの時間
http://www.cec.or.jp/e2e/symp/23sympo/resume/P002-003.pdf
にもこんな講演を見つけました。
原著は生物のデザインについて考察している書籍で、
なぜ、生物の世界には車輪のような形態が進化しなかったかなど、
興味深いテーマも解説されています。
数式が多いですが、
無視してグラフと文章だけでも楽しめる内容となっています。
調べてみますと、絵本版も出ていたようですね。
絵とき ゾウの時間とネズミの時間 (たくさんのふしぎ傑作集) 1,404円 Amazon |