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北海道全域ブラックアウト ~人命に関わるインフラを競争原理に曝した電力自由化~

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9月6日、北海道胆振東部地震が起きました。
山が崩れ家屋や道路などが被災、
死傷者も多数出ました。

ただ、北海道は広大で無事な地域のほうがはるかに多く
観光面などへの影響はできるかぎり少なく済んでもらいたいと願っています。

そんな北海道の中の一地方を襲った地震でしたが
電力においては北海道全域が停電してしまいました。
いわゆる「ブラックアウト(全系崩壊)」です。

工事などで行われる予定通りの停電と異なり、
意図しない停電はブラックアウトと呼ばれ
その復旧には時間を要します。

なぜ、ブラックアウトが起きたのか、
それは北海道電力が採算性を重視したからでした。

北海道は広大ですが、人口は多くありません。
採算ベースに乗せるためには
ほかの地域の電力会社よりもコストカットを図らねばなりません。
コストを下げるためには
少ない数の発電所で全道の電力を賄う必要があります。

地震で道内の電力の約半分を供給していた
苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所が停止し
ほかの火力発電所がそのぶんを補おうとしたものの、
過負荷状態となり、安全機能が作動して
供給ストップとなりブラックアウトが起きました。

苫東厚真に道内の電力供給を任せすぎていたからですが
石狩湾新港火力発電所を建設中だったとはいえ
その原因は北電の認識の甘さにあるといえるでしょう。

しかし、北電は以前よりも増してコストカットが必要となっています。
それは電力自由化の影響です。
一昨年4月、電力事業が自由化され、
従来の電力会社以外からも電気を買えるようになりました。
以後、テレビでは毎日、顧客獲得、維持のCMが流れています。

私は今も変わらず、電力自由化に反対しています。
「○○に変えればこんなに電気料金がお得に!」
なんて広告ばかりですが、
中長期的には電力自由化で電気料金が上がる可能性もあります。

考えてみてください。
たとえば、私の地域は関西電力ですが、
電力自由化により、関西電力は顧客維持や
離れた顧客の再獲得に予算を掛けなければならなくなりました。
最も大切なのは価格設定です。
より安い電気料金にするためには
コストカットが欠かせません。

関西電力のような従来の大手電力会社には
新規電力網の敷設や保守、更新の責任がありますが、
そんな顧客獲得に貢献しにくい予算が引き下げられ
後回しになり、悪影響が出る可能性があります。
また、発電所の建設も莫大な予算を必要としますが、
それも最小限に、しかも、できるだけ一つの発電所で
より広い地域へ供給したほうがコストは下がります。
もしも、発電所が自然災害などで何かあった時に
ほかがバックアップにまわれないような状態になる可能性があるのです。

人命や生活に関わる公共インフラを
単純な競争原理に曝すべきではないのです。
電気料金にしても、諸外国では短期的には下がっていても、
中長期的には、自由化前よりも上がってしまっているケースが少なくなく
自由化で電気料金が大きく下がった国はないのです。

電力事業には需要と供給のバランス、
そして、冗長性が必要です。
余裕が欠かせないと言い換えてもいいでしょう。
普段は無駄に思えるようなシステムが必要なのです。
そんな冗長性をゆるさないのが電力自由化です。
さらには2020年に発電と送電を行う企業を完全に分ける
「発送電分離」が行われます。

先が思いやられます。

電気を、蛇口を開けば出る、
締めれば止まる水道と同じように考えているのでしょうか。

北海道ではこれから冬に向かっていきます。
法的根拠のないまま泊原発は止まったまま。
北電は節電の呼びかけをしないという流れですが、
現状、300万kW余りの電力需要ですが、
冬になると500万kW以上の電力が必要になります。

もしも、供給のバランスが崩れ
またブラックアウトが起きた場合、
間違いなく死人が出ます。
今回のブラックアウトもたまたま冬ではなかったというだけで、
もしも、冬にあの地震が起きていたら
死者数は揺れによる直接の犠牲者数とは比べものにならない
人数の命が奪われていたことでしょう。
それは天災ではなく、人災と呼ぶべきかもしれません。

高橋北海道知事や
安倍総理は冬の電力についてどう考えているのか、
それが全く見えません。
他地域からの応援といっても、
他地域と違い、北海道が接しているのは東北電力管内だけ。
東北も関東も電力が足りないと他地域から応援してもらったこともあり
余分な電力はあまりないでしょう。

北海道だけに限らず、ほとんどの大手電力会社は
老朽化した火力発電所を、寿命を超えて動かしています。
CO2も大量に排出しています。
無理矢理動かしている発電機が限界を迎えた場合、
それがブラックアウトを招くかもしれないのです。

 

電力事業に求められるのは、

価格だけでなく安定性も重要だということを忘れてはいけません。
 

 

 


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