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安田純平氏拘束事件 自己責任かどうかの議論は無意味

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フリージャーナリストの安田純平氏の会見がありました。
彼がシリアでアルカイダ系のテロ組織に拘束されてから、
ずっと「自己責任だから」という声から
英雄視する声まで様々ありましたが、
解放されたもしれないという段になり、
また、騒がしくなりました。

 

 

自己責任論、英雄視、いずれも誤りです。
まず、国家には自国民を守る義務があります。
日本国においては、憲法第25条がそれを定めています。

彼は会見で「紛争地に行く以上は自己責任」であり、
また、拘束中も交渉に応じないよう暗号めいたメッセージを送っていますが、
当人がどう考えているにかかわらず、
自国民が生命の危機に見舞われているのであれば、
日本政府は手立てを講じないわけにはいかないのです。

この問題は

自己責任では済まない

から大問題なのです。

戦場に勝手に行ったのだから自己責任、と言うからにはパスポート没収とか家族や職場に嫌がらせしたりとかで行かせないようにする日本政府を「自己責任なのだから口や手を出すな」と徹底批判しないといかん。(2015年4月3日)
https://twitter.com/YASUDAjumpei/status/583861195532214272

シリアのコバニには欧米からもアジアからも記者が入っていて、フェミニストの若い女性やら学生メディアやってる大学生やらまで集まっているが、日本は経験ある記者がコバニ行っただけで警察が家にまで電話かけ、ガジアンテプからまで即刻退避しろと言ってくるとか。世界でもまれにみるチキン国家だわ。(2015年6月20日)
https://twitter.com/YASUDAjumpei/status/611929652186193920

たとえ、自国を「チキン国家」と罵った過去があっても
守らなくてはならないのです。
今までについても、何もしていないはずもありません。
彼自身も2004年の講演で

どういう事情であれ邦人保護は政府の責務だ

という認識を政府批判の文脈の中で示しています。
この大前提がある限り、彼が英雄であるはずはありません。
彼を最終的に拘束していた組織が何者なのかはわかりませんが、
もしも、テロリストなら、
カタールが支払ったとされる多額の身代金で
彼の代わりに大勢の人の命が奪われる可能性があります。

シリア内戦は単純な政府と反政府組織の争いではないので
事態の把握は困難でしょうが、
彼とて、たまたま反政府側が追い詰められていて、
たまたま、トルコのサウジ大使館でジャーナリストの謀殺事件があり、
たまたま、カタールがサウジにいじめられているために
反サウジの今が国際社会にアピールするチャンスだとカタール政府が動いたに過ぎず、
ここで解放されていなければ、
まだ、日本政府は解放の手立てを探り続けることになったでしょう。

安田氏は会見で今後の紛争地取材について

行くかどうかは全く白紙です

と回答。行くとすれば、世界中が迷惑することになりそうです。
2003年からからイラクなどの紛争地で取材を行っているようですがね
何度も拘束された経験があり、
今回の拘束についても

ガイドがいない間に別の方向に入ってしまったので、完全に自分の凡ミスだ

としています。
彼は向いていないのでしょう。
紛争地の取材であれば、
現在地、目的地、通過する各地域の治安などを考え計画されるべきですか
計画外の軽率な行動がこの事態を招いた可能性が高く、
つまりは向いていないのです。

国家が人を殺すのが戦争。それがどのような影響をおよぼし、なぜ人々が殺されなければいけないのかを判断する材料は民主主義にとって絶対に必要。難民が出れば日本にも影響があると思う。地球上で紛争があれば、現地に入るジャーナリストの存在は必要というのが私の考えだ。

との安田氏の考えは否定しません。
ただ、それは安田氏の役割ではないのは間違いありません。
彼が現地に行くと、また、拘束され、
人質として有り難がられることになります。

フリージャーナリストは取材先で得た情報などを
大手メディアに販売することで糧を得ています。
なぜ、大手メディア自身が現地に人を派遣しないかといえば、
もちろん、安全ではないからです。

社員が亡くなったり、人質になったりすれば
社は大きな批判を浴びるでしょう。
フリーならば、個人の判断で行っていることであり、

そもそも情報の売買契約もないのですから
傷つくことはないでしょう。

しかし、世界的にはこの流れは変わろうとしているのかもしれません。
2014年のAFPの記事には

私たちは、反体制派が支配している地域に記者を送ることはやめた。危険すぎるためだ。外国のジャーナリストがそうした無法地帯に飛び込めば、誘拐や殺害されるリスクが高い。AFPに定期的に動画などを提供していた米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー(James Foley)氏が8月に、ISに殺害されたような悲劇が起こり得るのだ。反体制派が支配する地域では、外国人ジャーナリストはもはや地元住民の苦しみを外部に伝える目撃者としては歓迎されておらず、攻撃のターゲット、あるいは身代金のための「商品」として見られている。
http://www.afpbb.com/articles/-/3026762?pid=14477210

とあります。実際にISの組織に
フリージャーナリストが殺害された事件を受けてのことです。

フリーの人材を使うことはある。しかし、BBCのジャーナリスト同様に安全性を確保して取材にあたらせている。あきらかに危険を冒して撮影したと思われるフィルムを買わないこともある。きちんとした保護体勢や保険をかけていない状態で紛争地に取材に行くことを奨励したくないからだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/47717?page=2

こちらは同年東洋経済に掲載されたBBCの考え方。
大手メディアが間接的に
テロリストたちの「人質ビジネス」に
都合のいい状況を生み出しているからです。

BBCでは危険地域からフリージャーナリストのレポートは使わないルールです。シリアではイアン・パネル記者やダレン・コンウェイカメラマン、イエメンではオーラ・ゲリン記者、イラクではクエンティン・サマーヴィル記者など社員記者に元英軍兵などからなる「ハイリスクチーム」が同行し取材しています。
https://twitter.com/BBCMarikoOi/status/1058212660397756421

こちらは日本人初だというBBCレポーターの大井真理子氏のtweet。
現地の情報が欲しいなら、社の責任において安全に配慮し
人を派遣するのが筋だといえるでしょう。
フリーの人材を用いるにしても、
現地入りする前から契約し、
社員同様の対策が行われるべきなのです。

今後は白紙とする安田氏ですが、
当面、著書や講演などで稼ぐ機会に困ることはないでしょう。
迷惑をかけてその体験で稼がれるのは
個人的にはあまり気持ちのいいものではありませんが、
その程度に留めて、おとなしくしていてもらいたいと思います。
 


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