連日、メディアで大きく採り上げられている
池江璃花子選手が白血病を告白という件で、
こちらでは彼女が「AYA世代」ですので、
そのお話をお書きしたいと思います。
その前に、この件について
桜田義孝五輪担当大臣ががっかりしている」などと発言したことについて
批判されました。まずそちらをお書きしておきます。
https://www.sankei.com/sports/news/190214/spo1902140029-n1.html
そもそも囲み取材の中で出てきた発言で、
全体を聞けば何度も繰り返しているように
治療に専念していただいて、頑張っていただきたい。また元気な姿を見たい
これが主旨であることは明らかです。
もちろん、「がっかり」という言葉は失言だと思いますが、
集中砲火を浴びるような発言なのか、
ぜひ、ご自身でご確認ください。
さて、一般的にはがんという病気は年齢が高くなればなるほど
かかりやすくなるとされています。
ただ、子どもの頃の小児がんというものもあり、
中高年以外がんにかからないかといえばそういうものでもありません。
小児がんは1年間に子ども10,000人に約1人という
成人のがんと比べると、
症例数が少なく、「不治の病」などという言われ方をしてきた時代もありました。
しかし、ここ数十年の進歩により7~8割程度は治療できるようになったとされています。
小児がんで多いのが白血病で、次いで脳腫瘍、神経芽腫と続きます。
成人ですと、大腸、胃、肺、乳房、前立腺ですので
小児に多いがんというものがあることがわかります。
ただ、小児と成人をはっきり分けられるというものではありません。
昨年4月、大阪市立総合医療センターに「AYA世代専用病棟」が開設されました。
これは静岡県立静岡がんセンターに続き、国内2例目です。
このAYAは「adolescent and young adult」の略で、
直訳すれば、思春期と若年成人となります。
一派的には15歳から39歳までを指します。
思春期と若年成人をAYA世代と呼び、
この世代のがんは少ないことに加え、
小児に多いがんと成人に多いがんが混在していて、
さらに思春期から成人の時期には
卒業、入学、独立、就職、結婚、出産などたくさんのイベントがあり、
心理的にも自我が確立される時期でもあります。
医療や心理面において、AYA世代にはAYA世代特有の難しさがあり、
昨年3月の厚生労働省「第3期がん対策推進計画」でも、
AYA世代に発症するがんについては、その診療体制が定まっておらず、また、小児と成人領域の狭間で患者が適切な治療が受けられないおそれがある。
として、
国は、AYA世代のがんについて、小児がん拠点病院で対応可能な疾患と成人領域の専門性が必要な病態とを明らかにし、その診療体制を検討する。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000186560.pdf
とされています。
また、この世代におけるがんの難しさのひとつに
「妊孕性(にんようせい)」という問題があります。
白血病を含めてがんの治療成績が20年前とは比べものにならなくなっていて、
白血病においては抗がん剤などの化学療法のみで治療できるケースもあります。
ただ、化学療法や放射線療法、ホルモン療法により、
生殖能力が失われてしまう可能性があります。
妊孕性は子どもを作る能力のことで、
若い世代にはできうる限り、妊孕性への配慮が必要となります。
具体的には放射線から精巣や卵巣を保護や
精子や卵子を採取しての保存などが行われています。
ただ、女性の場合はがん治療を停滞させる場合もあり
将来の妊娠より、目の前のがん治療を優先するべきなのかと
患者は悩みを抱えることになります。
さらに、周囲の理解。
「AYA世代のがん」と聞いても、
理解してくれる人はまだ少ないように思います。
周囲に自分のがんをどう理解してもらうか
そんな悩みも抱えます。
せめて、「AYA世代」という言葉があることと
その意味ぐらいは周知されるべきと思います。