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自分の考えを疑わない限り「真実」には辿り着けない ~乳腺外科医無罪判決~

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東京都足立区の病院で、
女性の乳腺腫瘍の摘出手術を担当した男性乳腺外科医が
全身麻酔から覚醒途中だった患者に対し、わいせつな行為をしたとして、
準強制わいせつ罪で起訴された公判で、
東京地裁が無罪判決を言い渡しました。
この事件については、医師などが検察を猛批判し続けていました。

東京地裁は麻酔の影響を受けてせん妄状態だった可能性があるとして、
無罪判決としました。
こんなことは、警察が彼を逮捕する前に、
医師などに聞けばわかることで、
おそらくは、複数の医師などが「せん妄」について説明したはず。
また、警察や検察は「せん妄」について知る義務があります。

それなのに、彼は起訴されました。
日本の検察は諸外国のそれよりも、
起訴するかどうかを

「有罪にできるかどうか」で決めている部分が大きく
この事件ではその公算が高いと踏んでいたのでしょう。

せん妄は意識混濁に幻覚や錯覚が加わったような状態のことをいいます。
全身麻酔の影響からせん妄が見られることが多く
ICU、集中治療室のような部署を担当している医師や看護師にとっては
日常茶飯事の術後合併症となっています。

よく知られたところでは、認知症によるせん妄、
また、タミフル薬害騒動のデマ報道で有名になった
インフルエンザによる熱せん妄などもあります。

この件は術後せん妄です。
一般論として、患者にとって入院は大きなストレスとなります。
また、一般病棟からICUに移ることは
スタッフも知らない人ばかりで医療機器も変わり、
心身の不安定化を招きがちです。
さらに手術。不安に思わない人はいません。
せん妄は術後、数時間後から数日後に、
前触れもなく錯乱、幻覚、妄想状態となり、
1週間ほどで徐々に症状は消えていきます。

この事件で「被害者」は被告人が
「乳首を舐められた」「胸を見ながらマスターべーションしていた」と証言。

間違うべきではないのは、
この女性には落ち度が一切ないという点です。
彼女は確かにその体験をしたという「記憶」があり
その「記憶」に従って被害を訴えたのでしょう。

警察や検察で何より大切なのは「事実」であるはずです。
医療関係者がせん妄について説明を行い、
逮捕後も不特定多数から批判されてきたにもかかわらず
その可能性を疑わず、10か月間身柄を拘束し、
起訴に及びました。

検察のストーリーでは、病室から看護師などがいなくなった状況で
被告人がわいせつ行為を働いたとしているのでしょうが、
いつ看護師などが戻ってくるかわからない状況で
そんなことをするでしょうか。さらに部屋は満床の4人部屋です。

検察は「被害者」の左乳頭付近から
被告人の唾液と口腔内細胞を検出したと主張。
対する弁護側は鑑定を行った警視庁科捜研が
DNA鑑定時のデータやサンプルの残りを廃棄していることから
科学的信頼性がないと主張していました。

「被害者」の被害を受けたとされる時刻前後の状況はこういうものでした。

・痛みを訴える
・繰り返しナースコール、看護師をベッドまで呼ぶ
・看護師による検温と血圧測定
・大きな叫び声を上げる

「被害者」はそのいずれも憶えていません。
明らかにせん妄状態です。
おそらく検察は科捜研の鑑定結果を重く見て起訴したのでしょうが、
小保方事件でもいわれたように
実験ノートは書き換えられないボールペンなどを使用すべきなのに、
科捜研の研究員は鉛筆を使用。
重要なサンプルなども大掃除で捨てたとあっては、
疑われるべきは科捜研だということになります。

Twitterを見ていますと、被告人が医師であり
医師だから優秀な弁護士をつけるだけの財力があり
だから、無罪を勝ち得たんだというものがありました。

実際はこの被告人に特別な財力はありませんでした。
100日間拘留されていた事実もあります。
ただ、明日は我が身になるかもしれない、
あるいは今後の医療現場に対する懸念から
多くの医療関係者が寄付を行っています。
最終的には1,200万円になったそうです。

この寄付金があったから無罪になったのかどうかはわかりませんが、
もしも、なければどうだったのでしょうか。

おそらく、拘留中に
彼は無実なのではないかと思った警察官や検察官もいたはずです。
いなければ、日本国の科学レベルは絶望的です。
疑問視する声はなかったのか、
その声が上へと上がらなかったのか、
言えない空気があったのか、
あるいは黙殺されたのか、
検察が描いた無理筋のストーリーにより
冤罪は生み出されます。

自分の頭の中にある考えが正しいかどうか、
自ら疑わないようでは
真実に辿り着けるはずはないのです。

こんなことが繰り返されるようでは、
人手不足の医療現場からさらに人がいなくなってしまいます。


柳原病院事件乳腺外科医の控訴に反対する声明 - 東京保険医協会
https://www.hokeni.org/docs/2019022000033/

 


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