前回の「チコちゃんに叱られる!」は
「なんで鼻の穴は2つあるの?」が面白かったです。
「キンタロー。」さんのお顔で
受精卵から顔の各部位の発生を再現。
CGで描いたほうがいいのではないかと思って見ていましたが、
見終わると、ただふざけているだけでもないような気もしました。
進化形態学的には元々鼻の穴は4つあったと考えられ、
その古い形態が胎児期に残されているというお話でした。
涙点がその名残だったとは驚かされました。
鼻の穴が1つではなく2つである理由はほかにもあるとは思うんですが、
嗅覚という観点からは
匂い物質が放たれている方向を察知するためとなり、
番組的には「ステキな恋人を見つけるため」だと説明されました。
聴覚でもそうですね。
耳が左右にあるため、
音源の方向を察知しやすくなります。
フクロウでは左右だけでなく、
上下方向にもズレていますので、
獲物の位置を音だけでより察知しやすい構造になっています。
多くの動物にとって
嗅覚は最も広く利用されている感覚ではないかと思います。
その感覚は自分の体の外の世界を知る手段であり、
食料を見つけるため、身の危険を知るため、
同種や他の種の個体識別のため、
繁殖のためなどあらゆる場面で活用されています。
これは動物が進化の過程の早い段階で、
嗅覚を獲得したということでしょう。
人間の五感で最も利用しているのは視覚ですが、
嗅覚は重要な感覚です。
私たちの脳は、本能的な行動を司っている脳幹から出来上がりました。
現代でも魚類や両生類、爬虫類においては、
脳といえばこの脳幹がその大部分を占めています。
そのほかにはほぼ大脳辺縁系しかないとされています。
つまり、大脳辺縁系は原始的な脳にも存在する部分。
私たちの感覚を代表する視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚のうち、
嗅覚で得られた情報のみ、大脳辺縁系で処理しています。
大脳辺縁系は情動の表出、意欲、
記憶や自律神経活動に関わる部分で、
おそらく、私たちは脳が脳幹と大脳辺縁系だけの時代に
鼻の穴と同じように
嗅覚を獲得したものと思われます。
誰しも好きな香りというものがあります。
それは柑橘系の香りが好きといった知覚できるものから、
そこに匂いの物質があることに気付かないものの、
体や感情に何らかの影響を与える香りもあるでしょう。
広い意味での香り、フェロモンもその一つで、
人間でも性フェロモンを含め
嗅いではいるものの、
気付かない何らかのフェロモンもあるかもしれません。
香りは人間の動物としての原始的な部分を刺激するわけですが、
一部の研究者の中には
認知症予防、あるいは症状の改善にアロマテラピーを応用しようと
研究を続けている人がいます。
以前から香りと記憶には密接な関係があるのではないかとされ、
逆に認知症の初期症状には、匂いがわからなくなるという話も。
脳梗塞や脳腫瘍でも、匂いがわからなくなるケースがあるようです。
まだわからないことだらけですが、
人間は嗅覚に頼らなくなったとはいえ、
自覚しているかどうかにかかわらず、
匂いは私たちの生命に大きく関わっているようです。
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