ここのところ、婦人科系疾患について勉強することが多く、
その中で以前から疑問だった点について
一つの答えを見つけたような気がしています。
以前、こちらでもハロー!プロジェクトのメンバーが
子宮内膜症であることを公表したという記事をお書きしたことがあります。
増加しているとはお書きしたんですが、
なぜ、増加しているのかについては理解できていませんでした。
増加とはいうものの、実際には急増とするべきかもしれません。
それほど、子宮内膜症の女性は多く、
また、その自覚なしで月経時に不調を感じていても、
「いつものこと。自分の生理はそういうものだ」と思い込んだままで、
子宮内膜症であることに気付かない女性が多いようです。
まずは月経から。
月に約1回排卵があり、子宮内膜は受精卵の着床に備えます。
受精も着床も起きなかった場合、排卵後から約2週間で
子宮内膜は剥がれ落ち、月経が起きます。
子宮内膜は人体組織の一部ですから、
ダメージを受けるわけで、
女性には身体的負担がかかることになります。
現在、女性が生涯で経験する月経は約450回だとされています。
これは生涯の出産回数が2回としての計算ですが、
戦前は違っていました。
戦前の女性が生涯で経験する月経回数の平均は約50回だったというのです。
生涯の出産回数は5回前後。
月経回数でいえば、現代女性は戦前の9倍にもなります。
(戦前女性は100回という計算もあります。その場合は4.5倍)
こんなにも大きく月経回数に違いがあるのは、
出産回数の違いに加え、初経年齢の低年齢化、
初産年齢の高齢化、粉ミルクの普及による授乳期間の短縮などがあります。
それだけ、現代女性は体に負担がかかっているともいえます。
子宮内膜症は子宮内膜が子宮の内側以外にできる病気です。
発症の詳しいメカニズムははっきりしておらず
月経のある女性の約10%に見られ、
症状は月経痛、月経時以外の下腹痛、腰痛、性交痛、排便痛など。
かつては30~40代に多いとされた子宮内膜症ですが、
現在は20代から増加していて、10代見られ、
不妊の原因ともされ、
子宮内膜症が卵巣に発生すると、
卵巣チョコレート嚢胞と呼ばれる腫瘤を作ります。
卵巣チョコレート嚢胞がある女性は卵巣がんのリスクが高まります。
人類は進化の過程で、女性ホルモンのサイクルにより、
排卵から月経までのスケジュールを獲得しました。
ただ、100年も経たない間に起きた社会的変化に
生物学的進化が追いつけるはずはありません。
子宮筋腫が増えていることにも関係しているのかもしれません。
それだけ、現代の女性は自分自身の体について
よく知っておくべきだといえるでしょう。
月経痛なんて多くの女性が経験しているはずですが、
それが子宮内膜症の症状なのかもしれないのです。
「いつものこと」で終わらせずに
受診する必要があるでしょう。
余談ですが、私がお話を伺ったことのある女性産婦人科医に、
低用量ピルの服用で月経の回数を減らしている方がいます。
これは子宮内膜症の治療でも行われることですが、
そうではなくても、
急激な社会的変化に対応するため、
戦前の女性に近い状態に戻すという意味では
理に適った方法ではないかと思います。
低用量ピルといいますと、怖いイメージを持つ女性も少なくないと思いますが、
使用法を誤らなければ、女性の味方となるはずです。
妊娠を望む、望まないの意思にも関わりますが
現代の女性は、
そういう選択肢を考えておく必要があるのではないかと思います。
なお、ハローのOGでは、
子宮内膜症を公表し、
その後、女児を出産した方がいます。
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