まず、前回の記事でイタリアにおける新型コロナウイルスの問題について、
医師が減らされているとお書きしましたが、
2017年のデータでは人口当たりの医師数が日本の1.8倍もあります。
医師削減というのは、フランスのレゼコー紙などが報じているものの、
イタリア国内からの文書を見つけられませんでしたので、
現時点ではよくわかりません。
その点、不明と訂正させていただきます。
また、ブルームバーグなどはドイツ政府が
新型コロナウイルスの対策費を捻出するため、
均衡財政の放棄も辞さない姿勢を見せていると報じています。
EUの財政均衡主義はドイツが主導していますので、
今後の展開が注目されます。
日本の財務省の反応を含めて。
誤報としてはこんな記事がありました。
ついに証明された、新型コロナは空気感染する
記事は削除されています。
悪質なデマです。
Yahoo!トップにも掲載され、多くの人が今も信じていることでしょう。
記事を削除してもなかったことにはならないのです。
記事では新型コロナウイルス感染は
エアロゾルでも起きるので空気感染するという
謎理論を展開していました。
エアロゾルで感染する可能性は
ずいぶん前から言われていたことで、
インフルエンザウイルスでも起こるとされています。
エアロゾル感染は飛沫感染に分類されるもので、
空気感染ではありません。
空気感染で最もよく知られているのは麻疹ウイルスですが、
麻疹であれば、同じ部屋にいるだけで感染してしまいます。
もしも、新型コロナウイルスが空気感染するのであれば、
感染者はこの何百倍、何千倍にもなっていたのではないでしょうか。
記事のタイトルがアレなのに、最後の一文が
日本のメディアでは同論文の内容がまだ広く報道されていないが、「コロナは空気感染する」ということだけが大々的に報じられないことを祈りたい。
でした。煽り記事を出しておいて、
心の底からJBpressとこの記事の書き手を軽蔑します。
あとは「新型コロナウイルスで髄膜炎に」というものもありました。
これは紙媒体、テレビ番組などでも採り上げられましたが、
風邪でも髄膜炎になることはあります。
ただ、無闇なPCR検査が有害というのは少しずつ浸透してきたかと思います。
メディアの扱いが変わりましたね。
私は見ていないのですが、
加藤浩次さんが生放送で謝罪されたとか。
現状、テレビ朝日対他局という展開でしょうか。
有害番組の「モーニングショー」では、
「煽っている」という批判に対し、
玉川徹は「それはカウンターだ」としました。
逆張りという意味でしょうが、
逆張りで注目を浴び、世論を形成しようとしているのは
玉川徹自身ですから、苦しい言い訳にも程があるというもの。
批判に対し、あの番組は当初から
「必要な人にPCR検査を」と言っていたとしています。
いろいろと当時の発言を言い方を変えるなどしてごまかそうとしていますが、
そうであれば、その段階から医師が猛批判するはずはありません。
「希望者にはPCR検査を」と言っていたことが批判されたのです。
無闇なPCR検査が有害だという認識が形成されつつあることを実感したのは、
孫正義氏のtweetで大騒ぎになった件からでした。
ご存じの方も多いかと思いますが、
100万人ぶんのPCR検査を無料で行うとtweet。
すると、replyのほとんどが批判や制止でした。
医師らが特に目立ち、蜂の巣をつついたような状態で、
当にTwitter医療団のオールスターキャストになっていました。
その後、孫氏は撤回。マスク100万枚を寄付すると方針転換しました。
本当にPCR検査をやりかねませんでしたので、
一人の実業家に日本の医療崩壊への道が委ねられる事態は避けられましたが、
マスクはマスクで、どこで調達するのでしょうか?
マスク不足は需要急増対する供給能力不足が原因ですから、
買い占めるようでは、マスク不足は解消しません。
さて、私も先月無闇なPCR検査を行うべきではないとお書きしていますが、
PCR検査を希望者全員に? 無意味で混乱を招く上にそもそも不可能 -新型コロナウイルス-
https://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-12577700807.html
あらためてお書きしておきますと、
・PCRでの陰性は感染していないことを証明しない
・医療機関に検査希望の人が押し寄せ感染者を増やす
・検体採取の医師らに感染のリスクがある
・指定感染症であるため陽性の場合は入院隔離が必要となるが病床が足りない
・陽性の人に対応するスタッフが足りない
・感染しているとわかったところで特別な治療法があるわけではない
・早期に治療開始したほうが治療成績がいいというエビデンスはない
医師らの話を総合するとこのあたりになります。
PCR検査の問題点を語る時に必要なのが、その精度です。
99%という高精度の検査なんてものはありませんが、
仮に99%という高精度の検査があったとして、
特定の病気にかかっている人を見つけようとした場合、
孫氏発案のように100万人に対し検査を行えば、
1万人もの不正確な結果を出してしまうことになります。
インフルエンザの診断では
迅速検査が行われますが、医師らはその検査結果のみにより、
診断しているわけではありません。
問診、視診、聴診、視診などを総合して診断を下します。
上では検査の精度をひとくくりにしていますが、
実際は
「陽性である人を陽性と正しく判定する確率」
を表す感度と、
「陰性である人を陰性と正しく判定する確率」
を表す特異度があります。
インフルエンザ迅速検査の場合、
感度が50~70%、特異度は90%以上だとされていて、
感染していない人を陽性とする確率の特異度は低いものの、
感度が低いので
感染しているはずなのに陰性となってしまうケースが珍しくありません。
新型コロナウイルス感染症に対するPCRの場合、
感度は40%、特異度は90%ぐらいだそうです。
感染している人でもかなりの確率で陰性と判定してしまいます。
医師はインフルエンザに感染した人に
どのような症状が現れるか学習しています。
症例が山ほどあります。
ただ、新型コロナウイルス感染症の場合、
そういう蓄積がまだまだこれからというところで、
医師も診断に困ることになります。
かといってPCRに頼り切りにはできません。
本来、PCRのような特異度がそこそこ高く感度が低い検査は
ある程度、事前確率が高い集団に対し行うべきものなのです。
新型コロナウイルス感染症で事前確率が高いと考えられるのは、
発熱が続き咳が出ている、息切れしやすいなどの人で、
さらにレントゲンやCTなどの所見も加わるでしょうか。
今ですとクラスター感染の連鎖を断ち切るためにも行われていますね。
今でも、
もっとPCR検査を行わないと感染者が増え続ける
陽性で軽症の人は自宅療養させればいい
自宅療養なら医療崩壊も起きない
という人がいます。
たしかに指定感染症の特例で地域の患者数が多い場合に、
自宅療養が可能になる場合があります。
しかし、トイレットペーパーの騒動を見て下さい。
「ある」と言われているのに品薄が続きました。
普段から「そんなはずはない。もっと検査してくれ。入院させてくれ」
という人に帰ってもらうことに苦心しているのが医療機関です。
自宅療養しなければならないのに、
医療機関に押しかける人が必ず出てきます。
感染症に人一倍気をつけなければならない患者や妊婦たちが
医療機関にはたくさんいるのです。
マスコミはこれが「不治の病」であるかのごとく
恐怖心を煽り続けました。
今も「新型コロナは空気感染する」なんてデマを平気で出してきます。
恐怖心に駆られた陽性の人にそういう人が出ることを予測すべきです。
最後にひとつ。
クラボウが高精度判定を可能にする検査キットを発売します。
PCRと異なり、血中の抗体による判定法で、正診率は95%と謳われています。
血液1滴15分で新型コロナ高精度判定、専門機関向け検査キット2万5000円で、クラボウ
https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20200312_173178.html
血液採取であれば、医師らの感染リスクも軽減されますし、
PCRよりはいいようにも思えるのですが…
これはこれで混乱の種になるかもしれません。
これは中国の企業によるものでクラボウは輸入代理店とのこと。
なんでも体外診断用医薬品ではなく、
研究用試薬キットとしての使用に限定されるそうです。
一次資料にも「精度」という言葉は使われておらず、
あるのは「正診率」という言葉のみ。
「正診率95%」といわれても、
感度の概念である有病正診率なのか、
特異度の概念である無病正診率なのか?
少なくとも、抗体に着目した検査であれば、
治癒後もしばらくは陽性になりそうです。
体外診断用医薬品ではないので余計な心配ですが。
今後、このキットを活用して新しい判定方法が開発されるかもしれませんが、
今すぐどうこうという話ではないようです。
高精度の検査が開発されて
陽性と判定されたところで、
軽症であれば治療法が変わる訳でもないでしょうし。
その結果で、医療機関が混乱することのないようにしてもらいたいです。