日本救急医学会と日本臨床救急医学会は4月9日の通達の中で、
現場は救急医療体制の崩壊を既に実感しているとしています。
医療崩壊でまず起きるのは救急医療体制の崩壊だとされます。
大阪では大阪急性期・総合医療センターでは
重篤な患者の受け入れを停止と入院の制限、
大阪市立総合医療センターは救急外来も停止しているそうです。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041701129&g=soc
前回の続きです。
スウェーデン。
以前、この新型コロナウイルスに対しては
2つの道があったとお書きしました。
ひとつはゆるやかに感染者を増やして
多くの国民に抗体を獲得してもらおうという方法と、
もうひとつが活動の自粛と規制を行って、
できる限り感染者を増やさないようにするという方法です。
前者を「緩和戦略」、後者を「抑圧戦略」と呼びます。
ロックダウンを行っている都市や地域は後者ですが、
スウェーデンは前者の方法を採用しています。
これも武漢の封鎖解除の時にお書きしましたが、
強力な制限が行われている状態から解除すると、
多くの人は免疫を獲得できていませんので、
また、感染者数が急増、リバウンドが起きる可能性が高くなります。
強力な封じ込めには、このリスクが避けられません。
武漢の場合は、感染爆発後の封鎖ですから、
ある程度、武漢市内では免疫を獲得している人が多いかもしれませんが、
域外の人はそうではないでしょう。
前回の「正義のミカタ」からスウェーデンの緩和戦略を引用しますと、
集会は50人未満なら可能で、通信教育が可能な高校と大学のみが休校、
飲食店については立ち飲み、立ち食いは禁止でも、
着席しての食事であれば可能です。
ほかの欧州各国が外出禁止、全面休校、
飲食店営業禁止の「抑圧戦略」を採る中、
スウェーデンの「緩和戦略」が注目されているわけですが、
スウェーデンでは
重篤化のリスクが高い高齢者に対しては行動の制限を設けています。
そうしているうちに、冬が来る前に高齢者以外には免疫を獲得してもらい、
感染者の急激な増加を抑えようという戦略です。
日本でも「集団免疫」という言葉が聞かれるようになってきました。
その集団のうち、ある程度の割合で免疫を獲得している人が多くなれば、
その感染症か集団全体の脅威になることはないという考え方です。
反ワクチンの人は
「ワクチンなんか打たなくても○○にかかったことはない」
などといいますが、
それは周囲の人がワクチンなどにより免疫を獲得しているからで、
集団免疫により、
この反ワクチンの人の感染リスクを軽減させていることになります。
英ジョンソン首相が当初口にしていたのがこの緩和戦略です。
ただ、スウェーデンの場合、福祉がしっかりしている一方で
医療機関により80歳以上の人はICUに入れない、
60~80歳代でも基礎疾患のある人はICUに入れないとしているところがあるそうで、
一般論として延命も行われません。
高齢者に冷たい国かといえばそうでもなくて、
近所づきあいも日本より深いとされ、
外出が制限されている高齢者は
気軽に外出できる人に買い物などの用事を頼んでいるとのこと。
スウェーデンの21日のデータでは、感染者1万4385人で、死者は1580人です。
これだけ見ると10.7%の致死率となります。
かなり高いですが、国により検査適応の基準と態勢が違うでしょうから
感染者数は比較するデータとしては適切ではないかもしれません。
人口と死者数で見ます。
スウェーデンの人口は2019年で1023万人。
全人口の0.015%の人が新型コロナウイルス関連で亡くなっていることになります。
日本の場合、今年4月1日の概算値が1億2596万人で、
21日時点の死者数は248人。
全人口の0.00019%の人が新型コロナウイルス関連で
亡くなっているという計算になります。
これをどう評価するかは価値観次第だと思います。
緩和戦略では経済へのダメージを最小限にできるというメリットもあります。
スウェーデンは新型コロナウイルスの流行以前に、
そもそもの死生観が違うのです。
逆の考え方では、スウェーデン方式では
日本の場合、2万人程度の死者数を許容する必要があるでしょう。
また、スウェーデンでもこのプランの見直し論もあるようです。
日本は「抑圧戦略」と「緩和戦略」の中間でここまでやってきました。
法制度上仕方なかったからですが、
現場はとにかく、「患者を死なせない」ことを最優先に戦ってきました。
現場以外の政府、一般もその考えが必要であるように思います。
医療の現場が限界を迎えつつあります。
現場によっては既に限界を超えているところも。
もうこれ以上、現場の方々に「もっと頑張って」とは言えません。
最も多くのがん患者が受診している東京のがん研有明病院で、
看護師の感染が確認され、スタッフ110人が自宅待機。
当面、手術を8割減らすこととなりました。
ほかのところでも、手術ができない、後回しになるケースが増えています。
そういう患者にも対応してきたのもがん研有明だったのです。
医療現場が回らなくなってきています。
政府は人と人との接触機会を8割減らすよう求めています。
残りの「2割」には医療関係者やインフラ関係、
食料品の生産、流通、販売など、
私たちの生活に欠かせない方々の活動も含まれています。
それ以外の人がその「2割」を消費する余地は
ほとんどないと考えるべきでしょう。
人口に対する死者数が極端に少ない日本。
そこは誇るべきところですし、感謝すべきところです。
「もっと頑張って」とは言えない
この一点だけでも頑張る理由になるかと思います。