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各国の対応(3) 日本の強みは医療人と「CT」 -新型コロナウイルス-

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岡江久美子さんが亡くなられました。
またぞろ、早く検査していればという声が増していますが、
早い段階でPCR検査が行われていたとしても、
どういう治療が可能になったのかはわかりません。
アビガンが適応だったのかどうかも不明です。
彼女の生命を政治や医療への批判に繋げようとしている声もあります。
故人を特定の主張やイデオロギーに利用することは厳に慎まねばなりません。

もう一点。岡江さん死去の報道の中の
「放射線治療の影響で免疫力が低下」の部分を疑問に思っていましたら
Twitter上の医師らも
化学療法ならともかくと、疑問視していました。

私も仕事でお世話になっている乳腺専門医の先生に質問してみましたが、
一般論とした上で、乳がんに対する放射線治療では、
脊髄の被ばくは考えにくいため、
放射線治療の影響で免疫力が大きく下がることはないと思われるということでした。

記事としてはヨミドクターのこちらが正しい内容ではないかと思います。

[岡江さん死去]乳がん治療はコロナ重症化に影響するのか?
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20200424-OYTET50001/

現在、多くの方が放射線治療や抗がん剤などの化学療法を受けられていますので、
正しい情報の発信が必要です。
放射線治療を受けておられる患者さんの中に、
必要以上に怯えている方がいるとのこと。
メディアは責任を持って訂正するべきです。


さて、過去2回の記事で台湾、韓国、
スウェーデンの「戦略」についてお書きしてきました。
その中でも、日本の死者数が少ないとしました。

人口比でいえば、100万人あたりの死者は
依然厳しい状態にあるスペインの場合487人、
イタリアが429人、フランスが354人となっているのに、
日本の場合、2.7人です。ちなみに韓国は5.0人です。

この数値から、日本の「戦略」は
大きく間違ってはいなかったといえるでしょう。
日本や韓国は経済的に、地政学的に震源地の中国に近く、
世界的流行の最初期からこの問題に直面してきました。
日本は手探りの中、「できるだけ死者数を減らす」という「戦略」が
この結果に結びついているはずです。

それを可能にしているのが日本の医療・保健です。
厚生労働省が、つまりは財務省が弱体化させているとはいえ、
医療体制が整っていなければ不可能で、
全国民が低コストのみで高度な医療にアクセスできていることが重要です。

そして、当然、医療関係者の奮闘があればこそでしょう。

さらにもう一つ、日本は他の国にはない強みがあります。
かねてより、日本は他の国とは比較にならないほどのCTがあると言われていました。
放射線などを利用するコンピュータ断層撮影装置で、
私も患者としてCTのガントリーの中に入ったことがあります。

日本がまだダイヤモンドプリンセス内の問題として切迫感がなかった頃から、
この感染症には特徴的なCT所見があると報告されていました。
また、中国中南大学の研究者は報告の中で、CT所見により
PCR検査の偽陰性患者の見逃しを防ぐ効果が期待できるとしていました。

どの国でも現在は個人の患者に対するPCR検査には医師の判断が必要ですが、
当初は希望者全員に、あるいは軽い咳があるというレベルでも、
検査してきた国も少なくありません。
ただ、日本の場合は当初から検査のハードルが高い状態でした。

それでも、死者数を抑えられてきたのは、
各医療機関がCTを「気軽」に使用できていたからではないでしょうか。

日本のCT・MRI・PET保有数は世界何位? - 医療機器数ランキングを世界各国で比較
https://labcoat.jp/world-ranking-for-ct-mri-pet/

2年前の記事ですが、日本のCT保有数は100万人あたり107.2台で、
G7平均25.2台、OECD関連国平均の25.4台を桁違いに上回っています。
OECD関連国のうち、日本に次ぐ第2位はオーストラリアですが、
オーストラリアと比べても約1.8倍ものCTが日本にはあります。
日本X線CT専門技師認定機構の7年前の文書には

http://www.ct-ninteikikou.jp/greeting/index.html

現在世界第一位であり全世界の装置数の約30%を占めています。

とも書かれています。
放射線科診断医は当然のこと、ほかの医師、
医療機関によっては、診療放射線技師らの読影が診断に生かされているでしょう。
彼らはこれまでに多数の胸部CTの画像を見てきたはずで、
肺炎の画像も相当数経験しているはずでしょう。

他国とは桁違いのCTの普及率と、
その画像を見る医師や技師たちの読影力、
これらも日本の死者の少なさに関係しているはずです。

ただ、これからはわかりません。
医療崩壊が始まっていますので、今後も死者数が抑えられるかどうか。
その抑制には医療職以外の人の行動が重要です。
他国についても、成功しているとされる台湾や韓国にしても、
引き続き注視が必要な状況ではあります。

加えて、そもそも論として、
このウイルス、この感染症に関する情報は
研究などにより変化し続けます。
死者を増やさないためにも、
各個人が正しい情報に基づくアップデートを心がけたいものです。
 

 


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