先日、抱っこひもの中の子どもが
マスクを着けられているのを見ましたので、
こちらをご紹介しておきます。
日本小児科医会の5月25日のペーパーで、
https://www.jpa-web.org/dcms_media/other/2saimiman_qanda20200609.pdf
2歳未満の子どもにマスクは不要、むしろ危険!
としています。
これぐらいまでの年齢の子どもは、
鼻や口から始まる空気の通り道がまだ狭く、
マスクは呼吸や心臓の負担が増すと考えられます。
もちろん、熱中症のリスクも増大し、
子どもの顔色もわかりづらいため、
異変に気付きにくくなります。
この警告はCDC(アメリカ疾病管理予防センター)、
APP(アメリカ小児科学会)なども発しており、
乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを高めます。
そもそも、子どもの新型コロナウイルス感染症における重症例は少なく、
保育園などでもクラスター発生の報告はありません。
母子感染もまれです。
新型コロナウイルスを恐れるあまり、
子どもにそれ以上の危険な目に遭わせるべきではありません。
(日本小児科医師会のサイトより)
次の話題。
本日の厚生労働省の発表によりますと、
新型コロナウイルスに感染したことがあるかどうかを調べる抗体検査で、
「陽性」は東京都で0.1%、大阪府で0.17%、
宮城県で0.03%という結果だそうです。
新型コロナ抗体保有割合 東京0.1% 大半が抗体保有せず 厚労省 - NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200616/k10012471891000.html
一次資料を確認しますと、
抗体保有調査の結果について
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000640184.pdf
使用されたのはアメリカのアボット社と、スイスのロシュ社の検査試薬で、
2つの試薬でともに陽性となったものについて「陽性」としています。
今ある抗体検査試薬の中では、それなりに評価されている試薬のようですから、
ある程度の誤差があるとしても、
頭の片隅に残していた「集団免疫」のプランは
放棄すべき時に来ているのでしょう。
そもそも、日本で大流行はしていない。
ただ、感染すると一部で重症肺炎などを起こすケースがあり、
これまでに行われてきたのは、それを防ぐためであり、
日本では「少ない感染者」を上手く拾い上げていたと評価すべきなのでしょう。
よって散々言われてきた
「PCR検査が少ないから感染者数が少なく見えているだけ」
も、デマであると言い切れるでしょう。
もちろん、今も「誰かを感染させる可能性がある感染者」は
市中にいると考えるべきですし、
自分自身が「誰かを感染させる可能性がある感染者」である可能性もあります。
それを踏まえて、私たちは
このウイルスとどう付き合っていくかなのでしょう。
さて、北海道大学・西浦博教授の感染症数理モデルに基づく
「接触機会の8割削減」は必要なかったという議論があります。
かなり前から言われていましたが、
12日の大阪府の専門家会議で
大阪大学・中野貴志教授は
「大阪府内で最も感染が広がったのは3月28日頃」だとし、
吉村知事の「ピークアウトに外出自粛の影響はあったか?」との問いに
「なかったと思います」と答えています。
報道では、吉村知事、松井市長ともにたいへん驚いていたとのことでした。
中野貴志教授は日本物理学会所属で、
素粒子実験や原子核実験がご専門です。
中野先生は独自の指標「K値」を考案。
その詳細は
中野貴志教授(核物理研究センター)による論文等(K値について) - 大阪大学
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/info/corona/corona_info/from_members/rcnp_nakano
こちらの「論文のきっかけになったアイデアをまとめたノート(in Japanese)」と
「K値で読み解くCOVID-19の感染状況と今後の推移(in Japanese)」で示されています。
なかなか難しい話で、真っ正面から中野先生の主張を評価するのは、
私の能力的に厳しいです。
ただ、明らかに「?」の部分はあり、
緊急事態宣言が感染症数にどう影響を与えたのかを見るのに、
緊急事態宣言が「K値」を参照している点、
そもそも、緊急事態宣言などがなければ、
「K値」が直線的な推移に従うとしていますが、
「なんで?」と思うわけです。
前者の疑問については解説もされていますが、
得心できるというものではありませんでした。
ただ、ひとつだけはっきりさせておかなくてはならないのは、
中野先生は全てを無駄だったと仰りたいわけではなく、
今後どうすべきかについてが主眼なのでしょう。
西浦先生の予測も正しかったのかどうか、
今後もわからない可能性が高いかと思います。
とはいえ、国として対策せねばなりません。
その中での予測です。
中野先生の計算も、西浦先生の計算と比較せねばなりませんから、
仮にこの「K値」による予測を
緊急事態宣言前に行っていたらどうかは考える必要があります。
果たして、西浦先生よりも優れた予測となったかどうか?
科学の本質は「間違えてもいい」というものですので、
この点において、中野先生を批判すべきではないと思います。
ただ、私は彼の理論は間違っているのではないかと考えました。
少なくとも、中野先生の理論には
医療の逼迫という事象が組み込まれていません。
医療機関からクラスターが発生すれば、
理論のほかの部分が正しくても、
一気にこの理論は崩壊するのではないでしょうか。
そして、気になるのは吉村知事、松井市長ともにたいへん驚いたという報道です。
そもそも、吉村知事は以前から早期に経済活動の再開を訴えていました。
それができなくなってからは、対応を変え、
そこは上手く、使える戦力で采配できたかと思います。
しかし「驚いた」というのはどうでしょう?
既にお書きしたように、緊急事態宣言下でも、
「接触機会の8割削減」は不要という意見は多数ありました。
宣言解除後も京都大学大学院工学研究科の藤井聡教授も
その旨の主張をされています。
知事と市長がそれを知らないとはとても思えません。
こういう主張をしている学者がいるから、
会議に呼んで、その発言をしてもらおうとしたのではないでしょうか。
その上で、自分たちは驚いて見せたぐらいの話だと理解しています。
「接触機会の8割削減」の西浦博教授が厚労省から
北大の研究室に戻られるそうです。
何の得にもならない大仕事でした。
本当にお疲れ様でした。
政府の専門家会議副座長の尾身茂自治医科大学名誉教授や、
東北大学大学院医学系研究科微生物学分野の押谷仁教授らとともに、
奮闘してこられたと思います。
なぜ、日本で死者数が抑えられたのかが不思議がられていますが、
彼ら三氏の奮闘があったればこそだと思います。
一部で西浦先生に対して非難する声があります。
そういうことを続けていると、第2波が起きた時、
別の感染症による危機が訪れた時、
彼らのような役割を果たす専門家が誰もいなくなるでしょう。
誰だって大して得にもならないのに、
非難なんてされたくないでしょうから。
緊急事態宣言下、西浦先生について、
「西浦先生以上に感染症数理モデルの専門家はいない」
感染症の専門家がそう評していました。
逆にいえば、彼と同等の能力を持つ専門家がいないことが問題といえるでしょう。
西浦先生のような方の負担を減らし、
さらにより良い対策のためにも、
この種の問題に対峙できる専門家を育成してもらいたいものです。
「8割おじさん」のクラスター対策班戦記【前編】~ 厚労省のビルから北大の研究室に戻るにあたり伝えたいこと
https://news.yahoo.co.jp/articles/7296592623494483d13edd5da3a75bb9eb35ee9b
「8割おじさん」のクラスター対策班戦記【後編】~次の大規模流行に備え、どうしても伝えたいこと
https://news.yahoo.co.jp/articles/602a038dc47f6aa1a3952ba5f318888f50cc0713