上昌広がまた笑いものになっていて
本当は「今現在も生き続けているヒトラーたち」と題し、
記事化しようと思っていましたが、
さすがに看過できないので、この話題についてお書きします。
大阪府の吉村洋文知事と大阪市の松井一郎市長が記者会見を行い、
嘘みたいな本当の話で、嘘みたいな真面目な話をさせていただきたいと思います。皆様もよく知っているうがい薬を使ってうがいをすることによって、コロナの患者さん、コロナがある意味減っていく、コロナに効くのではないかという研究が出ました
と吉村知事は話しました。
これが「ミヤネ屋」で放送されたらしく、
3時台から既に該当するうがい薬が品切れ、
転売目的で買われたうがい薬が1万円近い値をつけていました。
関連する企業の株価も大きく上がっています。
ご存知とは思いますが、非常に質の悪い会見でした。
今後も研究を続けるということですが、
このウイルスは上気道だけではなく、
全身の問題ですので、まず治療目的の使用に意味はありません。
続いて予防効果も期待できないでしょう。
どのような可能性を期待しての実験だったのでしょうか?
うがい薬がコロナに効果か研究
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20200804/2000033223.html
こちらにそのヒントがあります。
大阪はびきの医療センターの松山晃文次世代創薬創生センター長は、
唾液のウイルスを減らすことで、家庭での身近な人どうしの感染などを減らす効果があるのではないかと期待している。数十例や数百例でははっきりとは言えないので、大規模な研究で確かめたい
としています。
つまり、感染者がうがいをすることで、
口腔や咽頭にあるウイルスを減らし、
その結果、家庭内感染を予防できないかといという期待です。
それをどう間違えればあの会見になるのか?
松山センター長は
うがいをしたあと、1時間程度でウイルスの量が再び増えるケースもある。うがい薬を使って、何回もうがいをすると喉を痛める可能性もあるので、注意が必要だ
ともしています。
実は、現在、風邪の予防にポビドンヨードを含むうがい薬を
保険診療では処方できなくなっています。
2014年からのことで、その前の2005年、
京都大学健康科学センターの川村孝教授らがうがいに関する論文を発表しています。
原著論文は面倒ですので、要約のページをご紹介しておきます。
京都大学-お知らせ/ニュースリリース 2005年10月28日 風邪の予防等に関する研究成果の発表について 詳細
https://www.gohongi-clinic.com/k_blog/2962/
水うがい群、ヨード液うがい群、対照群の3群で実施。
この中で最も効果があったのは水うがい群で、
ヨード液うがい群には明確な予防効果が認められませんでした。
なぜ効果が得られなかったかという話なんですが、
ポビドンヨードを使用することで、
口腔や咽頭にある有益な常在菌も殺してしまうからだと考えられています。
さらにポビドンヨードには問題があって、
ウォルフ・チャイコフ効果というそうなのですが、
含まれるヨウ素を摂りすぎると、甲状腺内のヨウ素の有機化が抑制され
甲状腺ホルモンの合成が低下してしまう恐れがあります。
うがいとはいえ、健康を損なう可能性がありますので、
習慣的に使用するものではないと認識すべきでしょう。
加えて、イソジンなどのポビドンヨードを含むうがい薬は医薬品ですので、
資格のない人が転売に関わるのは薬機法違反の犯罪です。
イソジンクリアなる商品は医薬部外品ですので、
セーフとのことですが、ポビドンヨードは含まれていません。
今回はあまりといえばあまにも酷すぎる話で、
早合点とするのも軽々しすぎますし、
リテラシーのなさが露呈したということなのでしょう。
研究を行うのは悪いことではありません。
ただ、松山センター長の実験もなぜ
「ポビドンヨードを含むうがい薬」群と「何もしない」群を比較したのか、
なぜ、「水のみによるうがい」群がないのか、疑問も多いです。
多くの医師は口腔内や咽頭のウイルスが減るというのであれば、
水でも減るのではないかと指摘しています。
疑問も多いですが、詳細がわからないので、
その点は放置するしかありませんが、
専門的な研究について、一般に発表するべきではないという論調があるのは、
こういうことが起きるからなんです。
まだ研究中なのに、それを結論のように発表してしまう。
知識不足のために、曲解してしまう。
自分が知識不足であることを認識しておかなければ。
知らないのであれば、勉強するか、
専門家の話を「最後までしっかり聞く」ことが大切です。
今回の出来事は、維新が目指す
大阪都構想に悪影響が出るのではないかと思います。
この感染症と経済を回すことに対する意欲はわかりますが、
それで府民や国民が間違った行動をするようではいけません。
特にマズいなと思ったのは、
何らかの理由で感染が疑われ、
PCR検査を受ける必要がある人がいるとして、
この人がどうしても陰性と判定されたいと思ったとすれば、
「そうだ!イソジンを買ってうがいすればいいかも!」
と思ってしまいかねないことです。
ポビドンヨードであれ水であれ、
うがいは咽頭からの検体採取、または唾液採取によるPCR検査において、
偽陰性を多発させる原因となるでしょう。
なお、大阪府による発表の一次資料はこちらにあります。
大阪府/大阪府立病院機構大阪はびきの医療センターによる新型コロナウイルス感染症患者への研究協力について
http://www.pref.osaka.lg.jp/kenisomu/povidon/index.html
この中で
このように呼びかけています。
うがいするなら水によるうがいで充分です。
健康を損なう可能性があるうがいを習慣的に行う必要はありません。
たとえ、感染していたとしても、
健康面で自らを犠牲にする必要はありません。
繰り返しますが、
うがいするなら水によるうがいで充分です。
研究の是非はともかく、結論らしきものすら見えていない研究を元に、
こんなメッセージを出すなんて絶対に行ってはいけません。
いかにもありそうにないですが、
今後の研究でもしもポジティブな新知見が得られたとしても、
現時点で、自治体の長があのような会見をしたことが
間違いであることに変わりはありません。