アメリカの大統領選挙が11月3日に投開票されます。
…されます、とはいうものの、
この日付にお題目どおりの意味があるのかは不明です。
郵便投票の是非、どこまでの票を有効とするのかなどの問題があり、
それだけでも面倒なのに、偽の投票箱、独自の投票箱、
投票箱の放火など、何が何やら。
そもそも、滞りなく行われたとしても、
米大統領選挙が異常なほど理解しづらいシステムです。
米には日本のような住民基本台帳がないため、
有権者となるためには、有権者登録が必要となります。
有権者登録が可能なのは、選挙日に18歳以上の人となっています。
大統領選挙は間接選挙ですので、
有権者は、各州の人口に合わせて割り当てられた選挙人に対し投票し、
この選挙人が大統領候補に対し投票を行います。
実にめんどくさい制度です。
この制度が始まったのは、1787年9月発効の合衆国憲法制定の時からで、
日本でいえば、在位最長50年徳川家斉の将軍就任の年。
松平定信の寛政の改革が始まった年です。
そんな時に始まった選挙人制度で、
なぜ、こんな手間のかかる制度が始まったかといえば、
国民が民主主義という考え方が浸透しておらず、
知識のある地域の有力者などに投票先を一任するという発想なのでしょう。
喩えが正確かどうか自信はありませんが、
日本の感覚でいえば、
「俺たちは難しいことはようわからんから庄屋さんにまかせるわ」
米連邦はそれが最善だと考えていた、そんな感じでしょうか。
しかし、現在、世界中の多くの国で民主主義が採用されていて、
今もこんなことを続けている理由はありません。
米国民の中にもおかしいと感じている人が多いようで、
現在の大統領選挙における選挙人制度に賛成している人は1/3程度に過ぎず、
2/3の人は改めるべきと考えているようです。
さらに不合理なのは、多くの州が選挙人の「総取り方式」であること。
たとえば、最大の人口を抱えるカリフォルニア州の選挙人は55ですが、
これがA28票、B27票という結果になった場合でも、
Aがカリフォルニア州55票を総取りします。
選挙人は全米で538人ですので、270人以上獲得した候補が大統領となります。
ただ、このシステムですと、獲得選挙人数と、
総得票数の結果が異なるケースがあります。
前回の2016年の大統領選挙では、
民主党・ヒラリー候補と共和党・トランプ候補が戦いましたが、
獲得選挙人数で、232対306でトランプの勝利で終わったものの、
総得票数では、6420万対6220万でヒラリーが上回っています。
昨日の朝日放送「正義のミカタ」では、
1876年、1888年、2000年にも同様のことがあったとしていました。
どの国の選挙でも、どんな選挙制度でも、
民意を完全に反映することは不可能ですが、
カジノのゲームではあるまいし、
なぜ総取り方式にしたのか、合理性は別にしても、
その理由らしきものは見つけられませんでした。
せいぜい「数えやすいから」ぐらいでしょうか?
さすがにおかしいということなのか、
メイン州とネブラスカ州は総取りではなく、
選挙人の一部(メイン州4人のうち2人、ネブラスカ州5人のうち2人)が
州全体の勝者に割り振られるようになっています。
今回の大統領選挙は共和党・現職トランプと、
民主党・バイデンの戦いです。
もしも、自分が米の有権者で、
間接選挙ではなく直接選挙であり、
棄権が許されないとすれば、
どちらに投票するでしょうか?
現実世界の究極の選択でしょうか。
どちらも欠点ばかりが目立ちます。
苦渋の選択となりますが、トランプに投票するのかもしれません。
現状、バイデン有利と報じられ続けていて、
実際にバイデン勝利となるのかもしれませんが、
本当にバイデンが大統領になるのかは不明です。
各州の開票結果が出る時刻が異なり、
さらに郵便投票もあります。
今回は新型コロナウイルスの問題で郵便投票の数が例年よりも多く、
郵便投票では民主党有利とされます。
よって、トランプ側は既に郵便投票は多数の不正が起きているため無効と主張。
実際に郵便投票を可能にしてしまいますと、
その票が本当にその人の意思なのかどうかわからなくなってしまいます。
日本では郵便投票は行われていません。
日本でも難しいのに、日本よりも劣るとされる彼の国の郵便制度ですから、
期日内に届けられるのかどうかも不透明です。
下馬評どおりであれば、郵便投票込みでバイデンの勝利となるでしょう。
ただ、トランプ側が「郵便投票は無効だ」と裁判を起こしたとすると、
大統領選挙の正式な結果の確定がどんどん後ろにずれていくことになります。
ごね続けているうちに、票が確定せず、
双方が過半数を確定できなくなれば、
連邦下院の投票により大統領が選定されることになっています。
これは各州1票の州ごとの投票ですので、
50州のうち、26州を獲得すれば勝利することになり、
各州の議員の構成では、26の州で共和党が過半数となっていて、
ここまで持ち込めれば、トランプに勝ちの目もあるかといったところです。
実に馬鹿馬鹿しい選挙制度ですが、
国家のトップとしては、米大統領は世界一影響力を持つ人物となります。
より優れた人物を選んでほしいものですが、
トランプ、バイデンとも、それには適さないのではないかと思います。