世界がデルタ株の脅威に曝されています。
国によってはマスク着用の義務を撤廃したところもあったのですが、
軒並み、その義務を復活させております。
世界的脅威であることを実感させるのは、
中国の慌てぶりが象徴的です。
人海戦術による大量の検査と、
都市単位での外出禁止令が出ています。
中国は自国製のワクチンを、一帯一路を通じ、
各国に提供するとしていますが、
そのデルタなどの変異ウイルスにどの程度有効なのかが気になるところです。
川瀬巴水「吉野蔵王堂」
我が国の8月2日の時点における実効再生産数は、1.76でした。
東京都と大阪府は1.68、神奈川県1.82、
沖縄県1.92などとなっています。
ここのところ、こちらでも何度か実効再生産数という言葉を出してきましたが、
あらためてお書きしてみたいと思います。
実効再生産数は、
ある感染症に対し、一定の対策下における
1人の感染者が平均して何名の二次感染者を発生させるかを推定した値
と定義されています。
これとは別に、基本再生産数(R0)というものが存在し、これは、
ある感染症に対して全く免疫を持たない集団の中で、
1人の感染者が平均して何名の二次感染者を発生させるかを推定した値
とされています。
どちらも、1人の感染者が何人を感染させるかを示した数値ですが、
基本再生産数は感染力そのものを示しています。
ただ、私たちは感染を防ぐ目的でマスクの着用、密になる状況の回避などを行っていて、
免疫についても、何かしらが働いています。
そうなると、基本再生産数は現実を反映しないことになります。
実効再生産数(Rt)では、実際にどうなのかを示します。
Rtが2であれば、1人の感染者がさらに2人の感染者を発生させ、
以後、この傾向が続く限り、
倍々ゲーム、指数関数的に感染者が増えることになります。
沖縄県は1.92。
2に近い値ですので、非常によくない状況です。
ただ、この再生産数はどちらも、
感染者数が少ない地域の場合、
少し感染者が増えただけでも、値が激増しますので、
その点の注意が必要となります。
たとえば、同日、和歌山県の実効再生産数は2.47と沖縄県よりも大きいのですが、
新規感染者数は40名。
ここのところ、30人台が続いていた中での人数でした。
楽観視はできませんが、沖縄よりも悪い状況とはいえません。
多くのメディアで、
入院対象者を重症患者や特に重症化リスクの高い人に絞り込む
という政府の方針が報じられました。
特に毎日や朝日の扱いが適切ではないのですが、
首相官邸のサイトには
重症患者や重症化リスクの特に高い方には、確実に入院していただけるよう、必要な病床を確保します。
それ以外の方は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備します。
パルスオキシメーターを配布し、身近な地域の診療所が、往診やオンライン診療などによって、丁寧に状況を把握できるようにします。そのため、往診の診療報酬を拡充します。
家庭内感染のおそれがあるなどの事情がある方には、健康管理体制を強化したホテルを活用します。
さらに、重症化リスクを7割減らす画期的な治療薬について、50代以上や基礎疾患のある方に積極的に投与し、在宅患者も含めた取組を進めます。
と、かなりニュアンスが異なります。
報道により大騒ぎになったので、田村厚労相が撤回するような話になっていますが、
撤回しようが何だろうが、医療は無限ではないんです。
これまでに何をしてきたんだという指摘は真っ当だとは思いますが、
今できることについては、既に限界を超えているところが多いです。
先日、ある救命の先生が「暇になった」とTwitterでお書きになっていて、
その理由が、新規の患者を受け入れられないからということでした。
これが現実なのです。
患者は新型コロナ感染症だけでないことを理解すべきです。
デルタの感染力の強さがかなりのものであることは間違いなく、
2019年末に武漢で蔓延した当初のSARS-CoV-2の基本再生産数は2.5とされましたが、
デルタは8だともいわれています。
昨年春から私たちが学んだ基本を再確認しましょう。
台湾でもデルタが猛威を振るいましたが、
ワクチン不足の中、現時点では見事に抑え込んでいます。
外出時のマスク不着用には罰金を科し、
飲食店ではテイクアウトのみ、
コンビニなどの入店時には連絡先を登録、
店に入るたびにQRコードにより行動が記録されていきます。
屋内では5人以上、屋外では10人以上の集会を禁止
娯楽施設、学校などを閉鎖しました。
元々、入国者には強制的な隔離が求められ違反すれば罰金、
感染の可能性がある人の外出も罰せられます。
これぐらいしないと、抑え込めないのでしょう。
日本の場合、与党が入院拒否、ホテル療養拒否の人に対し、
罰則を設けようとしたら、立憲民主党や日本共産党らが反対し、
実現しませんでした。
この程度の罰則すら決められないのであれば、
もう国民各自が感染しないこと、感染させないことに努めるしかありません。
ただ、台湾とて、ワクチン普及までの時間稼ぎに過ぎません。
イスラエルではファイザーとビオンテックのワクチン、
コミナティの3回目の接種が始まりました。
ドイツでもどのワクチンかは確認できませんでしたが、9月から始まるとされています。
ブースター接種と呼ばれるもので、
追加免疫効果を与えるものです。
ただ、ビオンテックのCEOの発言からは、
彼が、重症化を防げているので、
直ちに3回目接種が必要とは考えていないことがわかります。
イギリスでも高齢者や持病のある人、医療従事者などに対し
ブースター接種が始まろうとしていますが、
日本でも11月中ぐらいまでには2回目が終わればと願っております。
それまで時間を稼ぐしかありません。
実効再生産数がこのままでは、
全国の新規感染者数が3万、5万、10万など簡単に超えていくことでしょう。
新型コロナ感染症やそれ以外の病気や怪我の人も含めて、
死者が増え続けることになってしまいます。