これまでも変異ウイルス・デルタ株について、
危険性をお書きしてきましたが、状況はかなり酷くなっています。
新型コロナ感染症を含めて、
東京などでは急病や大怪我で救急車を呼んでも来ない、
救急車が来ても搬送先が見つからないなどの事態が日常的に起きています。
憲法上、私権の制限に限界がある日本において、
感染者の隔離に罰則が付けられない日本において、
医療現場にできることは限られています。
個人個人の心がけ以外に、感染拡大を止める方法はないのです。
小原古邨「朝顔に蟷螂と蜂」
さて、ずっと新型コロナ感染症に対しイベルメクチンの承認を、
という声がやかましいです。
長尾和宏医師が既に処方しており、
「全国の全世帯に配布せよ」
「投与した患者は亡くなっていない」
「間違った事を言っていたとなったなら医者を辞める」
などと話したようです。
イベルメクチンに関する事実を先にお書きしますと、
新型コロナ感染症におけるイベルメクチンの効果についての論文は、
捏造による不正があったとして撤回されています。
その後も試験が行われていたようですが、
プラセボ(偽薬)を投与された人との比較で、
有効性が確認されていません。
それ以前の4月の段階で、
イベルメクチンを製造販売している製薬会社MSD株式会社は、
このような見解をリリースしていて、
新型コロナウイルス感染症流行下におけるイベルメクチンの使用に関するMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のステートメント
https://www.msd.co.jp/static/pdf/announce_20210402.pdf
その中で、
・前臨床試験では新型コロナウイルス感染症に対する治療効果を示す科学的な根拠は示されていない
・新型コロナウイルス感染症患者さんに対する臨床上の活性または臨床上の有効性について意義のあるエビデンスは存在しない
・大半の臨床試験において安全性に関するデータが不足している
としています。
元々、ヒゼンダニによる感染症・疥癬の特効薬で、
イベルメクチンを無駄に処方する医師らの影響で、
本来、必要な疥癬患者のためのイベルメクチン不足が懸念されています。
一般論として、論文不正は研究者にとって、極めて不名誉なものです。
地位と名誉を失うこともあるでしょう。
論文著者はなぜ、捏造などの論文不正を行ったのか、
新型コロナ感染症におけるイベルメクチンの効果で、
なぜ、不正を行ったのか、それが気にならないのでしょうか。
昨日、東京都医師会が緊急会見を行い、その中で尾崎治夫会長は
「イベルメクチンが全く効かないことはない」
と述べました。
緊急記者会見(令和3年8月13日開催)
示されたデータがこれ。
よくもこんな下らないものを出してきたものだと思います。
イベルメクチン以外の要素が一切ないこんなものが
何の参考になるというのでしょうか。
例えば、ラーメン好きの人たちが顔を合わせて、
「俺は新型コロナに罹ったけど軽症で済んだ」
「わたしも」「俺も」「そういえば自分もそうだ」
なんて話になった場合、
ラーメンに重症化予防効果があるということでしょうか。
イベルメクチンを処方した人が新型コロナ感染症から回復した
と
イベルメクチンの効果で新型コロナ感染症から回復した
は違うのです。
さらに、服用した患者は何人ですか?
軽快したのは何人ですか? 亡くなったのは何人ですか?
副反応は? 有害事象さえデータがない。
こんなものを見せることの意味は、
世の中を煽動しようと思っているとしか考えられません。
研究を続けるのは結構ですし、東京医師会や北里大学、
興和株式会社などが治験を続けていますが、
現時点で
「イベルメクチンが全く効かないことはない」
と言い切る根拠にはなりません。
こういう発表をしてしまうと、
被験者は「東京医師会が推している薬」と考え、
正確なデータがとれなくなるおそれがあります。
研究の邪魔、治験の邪魔なのです。
先日、新型コロナ感染症に対するイベルメクチンの効果について、
軽度の外来患者1300人規模のランダム化比較試験で、
重症化も死亡も減らす効果はないと発表されたばかり。
私の認識としては「期待薄」あるいは「効果はない」という評価です。
仮にもしも、イベルメクチンに期待通りの効果があったとしても、
長尾医師や東京医師会の主張が誤りであることに変わりはありません。
それは、データに基づかずに「たまたま当たった」に過ぎません。
それが科学です。
イベルメクチンで薬害が起きた場合、
医師免許返上ぐらいでは釣り合いがとれません。
長尾医師が医師を辞めようが何だろうが、薬害の被害は消えないんです。
データ無視で、感情に訴える医師には要注意です。
この人はこういう本も書いています。
じゃあ、ワクチンは要らないのかと誤解させることが目的の表紙です。
彼の医師としての良心は痛まないのでしょうか。
「歩くシリーズ」が売れて、新型コロナにも乗っかろうという商売根性です。
彼は何冊も一般向けの書籍を多数執筆していて、
テレビにも多数出演。
そういう医師全てが問題というわけではありませんが、
そういう医師は、念のために警戒しておいたほうがよいでしょう。