仰天ニュースのアトピー患者の「脱ステロイド」について。
この種の情報はこれまでもさんざん害をもたらしていて、
メディアも知らないはずはないのに全く懲りません。
9月7日「ザ!世界仰天ニュース」で、
20代女性の荒れた肌が、ステロイドの使用をやめたことで
「見事に回復した」と紹介していました。
アトピー性皮膚炎患者を飯の種にしている連中がいます。
その中には医師もいて、「アトピービジネス」という言葉もあります。
番組はそういった連中を儲けさせる内容。
殊にこの番組の監修が東京練馬の藤澤皮膚科だとすれば、尚のことです。
ここでは、ステロイド剤を悪と決めつけ、
痛がる患者にポビドンヨードの塗布を勧めました。
実際の事例では、女児5歳の患者に対し、ポビドンヨードを塗布させ、
患者の母親がこの医師の言葉を信じ込み強要、
患部にポビドンヨードを塗るわけですから、
その度に痛みに耐えなくてはなりません。
この女児は、車道に飛び出して死のうとしました。
5歳の子ども、がです。
この頃の子どもだと、自殺という概念すら想起することは難しいかと思います。
それでも、彼女は死のうとしたんです。
しかし、この医師は我慢を強いて、
さらに、使用していないのに「ステロイド剤を使用したからだ」と母親を責めました。
2002年、アトピー性皮膚炎が悪化したとして提訴され、
2004年、原告である両親の訴えが認められ、
640万円の支払いが命じられました。
過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例 皮膚科 東京地判平成16年6月16日判決
今、調べても「練馬 藤澤皮膚科」でこれだけの情報にたどり着くことができます。
番組スタッフが知らないはずはなく、知らないなら怠慢です。
おそらく、アトピー患者のほとんどが
できるものなら「脱ステロイド」したいと願っているかと思います。
しかし、現実は「脱ステロイド」を勧められ始めた患者が、
「脱ステロイド」を図るも、どうにもならなくなって、
標準治療を行っている皮膚科に駆け込むことになります。
そういうケースが日々起きているわけです。
なぜ、番組はこんなトンデモ医師に監修を任せたのでしょうか。
患者のことなんか全く考えていないわけです。
視聴者の感情を煽り、視聴率が稼げればそれでいいのです。
この番組により、藤澤皮膚科に行ってみよう、
話を聞いてみようと考える患者や患者家族が増えるでしょう。
そして、被害者が増えることになります。
番組はこのようなメッセージを出していますが、
【9月7日の放送について】
肌荒れを克服した女性の体験談の中で、ステロイド薬の使用を中止したエピソードに触れましたが、患者が自らの判断で薬の使用を中止すると症状が悪化することがあります。
治療については、医師の指導に従ってください。
【9月7日の放送について】
— ザ!世界仰天ニュース【公式】次回は9/14放送! (@gyoten_ntv) September 10, 2021
肌荒れを克服した女性の体験談の中で、ステロイド薬の使用を中止したエピソードに触れましたが、患者が自らの判断で薬の使用を中止すると症状が悪化することがあります。
治療については、医師の指導に従ってください。https://t.co/5A01aLoUXO
訂正するでもなし、もちろん謝罪するでもなしの状態です。
患者が苦しもうが知ったことではないのです。
がん治療などにもいえることですが、
日本の医療は皆保険制度により、
だれもがほぼ等しく標準治療を受けることができます。
"標準"といえば、ほかに何か特別な治療法があるのかと思いがちですが、
標準治療が最も優れた治療法であることがほとんどです。
だから、オプジーボなどの高額治療が
健康保険制度を食い潰すといわれるわけです。
アトピー性皮膚炎についても、
医学界でコンセンサスを得た標準治療を行っている医師の指導に従ってください。
もしも、ステロイド剤を減らしたいと考えるのであれば、
主治医に相談してください。
標準治療を勧めておられる皮膚科専門医で医学博士、
近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司先生と、
アレルギー学会指導医で小児科学会指導医の堀向健太先生の著作をお勧めします。