安倍晋三元総理が暗殺された事件で、
メディアがいろいろと報じていますが、
総じて、ひどいものばかりです。
基本的に、被疑者の供述ベースに基づく報道が繰り返されていて、
ある種のストーリーが形成されようとしています。
奈良県警には怒りしかなく、
もちろん、守れたはずの要警護者の命を守れなかったこともありますが、
被害者の死後においても、違法なリークを繰り返し垂れ流しているようで、
無用な憶測を増幅させています。
そして、この凶行への同情論が高まれば、
彼を英雄視する人が出てくるでしょう。
問題となっているのは犯行の動機ですが、
彼が真実を語るとは限らないわけです。
さらに、被疑者は鑑定留置が妥当だとされていて、
「彼が真実だと認識しているモノ」が事実だとは限らないわけです。
捜査においても、供述ベースを前提とした取り調べを行うと、
被疑者は供述ベースに沿った内容しか話さなくなるとされます。
これでは事実は解明されないだけでなく、
誤った結論に導かれてしまうおそれがあります。
さらにこんな話も。
被疑者が知人(?)に送ったとされる手紙の中で、
安倍氏を「本来の敵ではない」としているとのこと。
「本来の敵」は旧統一教会。
これが彼の本心だとして、何を意味するかといいますと、
「本来の敵」ではなくとも、危害を加えることで大きな話題になれば、
頼まなくてもマスコミや世間が勝手に「本来の敵」を攻撃してくれる。
そういうケースだということなんですよ。
今後、犯人にも「本来の敵」にも縁もゆかりもない人にも
命が狙われる可能性が生まれました。
もっと狙いやすい標的、ソフトターゲットが狙われるかもしれません。
動機や犯人の生い立ち、生活に同情が集まり、
犯人は悪だが、犯人には同情する、
そういう空気が醸成されかねないことです。
それでいいのですか? そういう報じ方をしているのですよ。
「~を殺したのはよくないことだが」のような論評は、
絶対にしてはいけないのです。
川瀬巴水「日本風景集II 関西篇 京都知恩院」
旧統一教会(面倒なので以下統一教会)については、
関連団体へのビデオメッセージを出した安倍氏が軽率だったといえるでしょう。
ただ、統一教会の遣り口として、世界中の政治家にちょっかいを出していて、
わずかでも関係がある政治家には安倍氏以外にもたくさん確認できます。
日本では鳩山由紀夫元総理もでしょうか。
彼は統一教会本体のイベントで登壇しています。
自民はもちろん、旧民主党系、維新あたりも。
たぶん、統一教会と完全に無関係なのは、
公明党と日本共産党、社民党ぐらいではないでしょうか。
海外ではバラク・オバマ元大統領もそうですね。
現大統領のジョー・バイデン、ヒラリー・クリントンあたりも。
選挙に対し、節操がないのが政治家です。
少しでも票田になりそうなところには顔を出すのが常識となっていて、
また、常に選挙のためのボランティアを求めています。
統一教会はそのあたりを理解しているのでしょう。
宗教団体だろうが何だろうが、票になりそうなら接近するという節操のなさは、
このあたりからもわかります。
ただ、統一教会と安倍氏については、かなり特殊で、
現代史を理解しなければなりません。
1968年、日本と韓国に「国際勝共連合」なる政治団体が発足するのですが、
この団体名は「共産主義に勝つ」として、名付けられ、特にソビエトを敵視。
反共産主義を掲げるのですが、これは事実上の統一教会の下部団体でした。
1950年代、日本はアメリカなどから反共の盟友の立場を期待されていました。
しかし、日本でも共産主義に理想を求める人たちは多く、
共産主義者などの暴力行為やデモを取り締まりたいのですが、
軍を失い、警察権も弱体化していました。
一方、右翼たちもいました。右翼の中には反社会的な組織を結成し、
政界にもパイプを持つようになります。また、国際勝共連合とも接触しています。
岸信介はこのあたりと接点がありました。
岸信介は日本の右翼や国際勝共連合を利用し、
日本で力を増大させる共産主義に対抗しようとします。
この頃、岸信介は総理大臣ではありませんでしたが、
再登板となり、強いとはいえないのでしょうが、
国際勝共連合、統一教会は日本の政界への影響力を持っていたのかと思います。
ただ、ソビエトがなくなり国際勝共連合の存在意義はなくなりました。
現在の日本において、統一教会の政界への影響力は薄いのではないでしょうか。
岸信介は安倍氏の祖父ですが、彼らと同調するには無理があります。
たとえば、統一教会は1965年の日韓基本条約や日韓請求権協定を無視して、
日本に「賠償すべきだ」と言い続けています。
安倍氏とは相容れない主張です。
信教でも、安倍氏は「法然上人をたたえる会」の副会長ですから、
浄土宗なのでしょう。
ついでに考えてみますと、鳩山一郎がいた十日会系は、
安倍派にもつながるわけですから、
鳩山由紀夫登壇の根っこは同じ所にあるのかもしれません。
事件後、統一教会の名前が出てきたことで、
政教分離の憲法違反だと主張する人が出てきました。
全く的外れで、政治家が特定の宗教団体にビデオメッセージを出そうが問題ありません。
もちろん、鳩山由紀夫元総理の登壇も問題ありません。
日本には仏教の僧職で議員の方もいらっしゃるわけで、
もちろん、キリスト教の神父や牧師もいることでしょう。
これを言い出すと、議員自身の信教の自由と表現の自由を侵すことになります。
憲法第一条は天皇ですが、天皇は神道の頂点の存在。
天皇自身は別にするとしても、宮内庁の存在は違憲になるでしょう。
議員たちは神社の祭にも顔を出せません。
世界における政教分離を見てみますと、
分離型と融合型に分かれます。
分離型で象徴的なのがフランスで、かなり厳格なものを求めています。
だから、公の場でイスラム教徒の女性たちのブルカやヘジャブを禁止しようとし、
パリ五輪でも禁止しようといいう動きがありました。
日本の場合、分離型ではあるもののそういう議論はなく、
たまにどこそこの地鎮祭で
公費が使用されたのは違憲だとかそういう裁判はありますが、、
程度問題なのでしょう。
具体的には、目的効果基準という考えがあり、
「行為の目的が宗教的意義をもち、
その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になる」
場合に違憲となるようです。
国葬については、特定の宗教だと違憲になるのでしょうか。
吉田茂の時は、野党の反対がありつつも宗教色を薄めての実施だったようです。
ただ、宗教の始まりは誰かの「死を悼む」ことから始まっているとされ、
完全に宗教と切り離すのは不可能でしょう。
国葬の実施については賛成です。
ひっきりなしに海外から要人が弔問に訪れていましたが、
国葬を実施するという発表がなければ、今後も続くことでしょう。
はっきりと発表したことで、
要人たちはその日に合わせて来日すればいいことになります。
国葬の費用については、
モリカケサクラで野党が国会や各委員会を空転させ、
無駄になった日数の3日分ぐらいでしょうか。