塩野義の新型コロナ感染症治療薬ゾコーバですが、
私は塩野義のロビーイングの手法や、
治験のデータの取り扱い、ゴールポストを動かすやり方などから、
この新薬を批判してきました。
実際にあまり処方されていないようで、
それは禁忌が多く、特に女性に対する処方は注意です。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/202301/578328.html
しかも論文の上では
症状のある期間を1日程度(8日間から7日間に)減らしてくれる、
かもしれない…、という代物だからです。
ただ、ここへ来て後遺のリスクを減らす可能性が示唆されています。
塩野義のプレスリリースを見る限り、6か月の追跡調査による評価で、
後遺症の予防効果が期待できそうです。
しかし、そもそもこの新薬は治療薬として承認されていて、
後遺症については、主要アウトカム、
つまり、後遺症のリスク減は論文の主要な着地点ではありませんでした。
後遺症は当初の治験の評価項目ではなく、
現時点で、飛びつくのは早計かと思います。
倫理的にいえば、今回の塩野義のプレスリリースは、
健全ではないと思います。
研究は第一に研究デザインがあります。
これはそこから外れた内容です。
塩野義は、後遺症の予防効果について、
医師主導型の治験を計画中で、その内容次第といったところでしょう。
もしも、良好であれば、世界中で売れることでしょう。
ただ、1日10万円という価格が普及の足枷になるかもしれません。
薬価再算定でどうなるでしょうか。
後遺症については、わかっていないことが多く、
有力な説にはこんなものがありますので、ご一読ください。
新型コロナは単なる呼吸器感染症ではありません。
mRNAワクチン2回接種済みなら、
感染後6か月の心血管疾患リスクを41%も減らせるというデータもあります。
mRNAワクチンでは、接種による心筋炎のリスク上昇が確認されていますが、
その心筋炎のほぼ全てが治療可能で軽微。
接種者が受けるデメリットよりもメリットのほうがはるかに大きいです。
葛原輝「豊後梅」
さて、アメリカではXBB.1.5が85%になりました。
XBB.1.5が幅を利かせるようになってから、
これを凌駕するような伝播性の変異株は出てきていないようです。
日本の場合、東京都のデータでは、
BA.5系統34.7%、BQ1.1系統18.9%と続き、
XBB.1.5系統は1.4%しかありません。
マスクに関しては、カリフォルニア州の小学校のデータが面白いです。
下水の調査で、児童のマスク着用率が高くなると、
発生率が大幅に減少しているようです。
イングランドでは、10~14歳で再感染の割合が約70%とのことで、
一度感染すれば、二度と感染しないという期待はできません。
感染による集団免疫も同様です。
こちらは1918年からのインフルエンザによるパンデミックを回顧したもの。
地域的な感染確認からアメリカ全土に拡大するまで数週間、
ここ3年の私たちのように、社会活動を制限する動きがありました。
やがて、政府関係者はパンデミックの終息を宣言し、
皆が劇場や映画館、ダンスホール、商店に詰めかけます。
そして、1920年にまた、大きな波に見舞われることになります。
そうしている間にも、新聞のインフルエンザについての記事は小さくなり、
人々は目の前で起きている多くの死者と、
未来の死者に目を向けなくなっていきます。
歴史は繰り返されました。
ただ、私たちは当時とは違い、ウイルス学、感染症学、疫学などで、
多くの知見を獲得しています。
今後、社会活動が活発になるかと思いますが、
未来の死者と後遺症に苦しむ人を減らすため、
理性的な対策が必要かと思います。