サイエンスZERO「ウナギはどこへ行った?」 その1
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11337028413.html
こちらからの続きです。
いわゆる"養殖ウナギ"にしても、
遠い南の海から旅をしてやって来るシラスウナギを捕らえないことには、
それも不可能です。
一昨夜はシラスウナギが日本に来なくなった原因について、
気候変動を挙げました。
しかし、原因だと考えられているのは
それだけではありません。
私たちの川にその原因はあり、
そして、それは私たちの責任であるというのです。
これがウナギの数を減らしている原因の一つだと考えられています。
どこの川にでもある堰。
シラスウナギはこれを超えられないんだそうです。
しかし、この堰の中央部分を見てみますと、
そこには遡上のための魚道が設けられていることがわかります。
実は泳ぐ力の強いアユなどでしたら、
この流れに逆らっての遡上も可能ですし、
少々の段差ならば、飛び跳ねて超えていくことでしょう。
しかし、シラスウナギにそういった能力はありません。
水底を這うように泳ぐことは出来ても、
強い流れに逆らうようなことは不可能なのです。
だから、堰の脇にシラスウナギ、
ウナギが停留してしまいます。
2500kmもの旅をしてきたシラスウナギは、
そこで行く手を阻まれているということになります。
そして、この護岸。
ウナギの住処として適していませんし、
ウナギが食べる食料にも問題が。
ウナギの主な餌はエビやカニ、小魚ですが、
自然の川岸と人工の護岸で、
それらの数の違いを見てみますと、
このように人工の護岸では、
その数が大きく減ってしまっています。
これはウナギだけの問題ではなく、
川に住む他の生物たちにとっても重大です。
防災のためにコンクリート製の護岸は必要かもしれません。
しかし、それを備えた上で、
その前にアシを植えて生き物たちの住みやすい環境を用意するなど、
防災と生き物たちの環境を整えることの両立は可能なんです。
先の人工の堰についても、
海外ではこのような工夫がされているようです。
イールラダー(eel ladder)
と呼ばれるもので、
その名の通り、ウナギのために用意した梯子です。
この中には人工芝が植えられていて、
シラスウナギが登りやすいようになっています。
このウナギの梯子の設置には、
巨費が必要だという訳ではありません。
ウナギが遡上する可能性のある川の堰には、
取り付けておくべきだと思います。
私たちは古来よりウナギを食べることを当然としてきました。
それなのに、私たちは彼らが生きる環境について、
考えなさすぎたように思います。
堰についても、魚道を設けてあるから大丈夫と、
あるいはアユやサケ科の魚たちがそこを遡上しているのを見て、
大丈夫だと思ってしまっていたのでしょう。
なせか、ウナギのことは考えませんでした。
ウナギが減少していることに気付いていても。
ウナギに親しんできた私たちが、
そんな低レベルの過ちを犯していたことに驚かされました。
ウナギたちは数千万年前に既に、
私たちが知る姿とほとんど同じ姿で、
この地球に存在していました。
地上で恐竜たちが暮らしていた時代から、
繰り返してきた生命のサイクルを守るために、
出来ることはしたいものです。
次に、真の意味での養殖について考えます。
私たちが今後もウナギを食べ続けようとするのであれば、
ウナギの完全養殖の技術が必要になるでしょう。
2010年の4月8日、人工孵化したウナギの稚魚を成魚まで育て、
次の世代の卵を採取、これを孵化させるに成功した、
そんなニュースが流れました。
これが世界初の人の手によるウナギの完全養殖の成功でした。
研究から40年目の出来事です。
三重県度会郡南伊勢町、
独立行政法人・水産総合研究センター、
増養殖研究所でのことです。
あの時は生まれたばかりでしたが、
今はこんな大きくなっています。
ウナギの養殖の研究で、一番問題だったのが、
稚魚が何を食べているのかがわからないことでした。
他の魚が食べているようなものは食べず、
しらみつぶしに試してみるものの、
成果はなく、苦し紛れに与えたサメの卵をすりつぶしたものに
稚魚たちが集まったことで、
餌の問題は解決したかのように見えました。
しかし、ウナギの稚魚は海中を潮流に任せて移動しています。
サメの卵を水中に入れても、
それは底に落ちます。
大規模な養殖を目指すこともあり、
これでは大量の稚魚たちに与えるのには不向きです。
大水槽の中層で浮遊する餌が必要であることに気付かされ、
つまり、それは自然界で稚魚が何を食べているのか、
それがわからないことには、
前へ進めないという最初の問題に戻ってしまうのでした。
それがついにわかったのかもしれないといいます。
これはオタマボヤ。
クラゲに似ていますが、脊索動物です。
オタマボヤはプランクトンを食べていますが、
その残り滓をハウス、泡巣と呼ばれる袋に詰めて、
放出します。
このハウスはやがて破れて、
マリンスノーとなり、
ウナギの稚魚はこれを食べているというのです。
ようやく、ウナギの完全養殖の道筋が見えてきました。
しかし、あくまでも光明が見えた段階に過ぎません。
今、この"養殖ウナギ"を商業ベースで食べさせようとするならば、
1匹、100万円以上の値段になるようです。
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サイエンスZERO「ウナギはどこへ行った?」 その2 ~ウナギが減った理由と完全養殖~
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