今夜は物語でも一つ。
大阪の毎日放送では、毎週日曜朝6時過ぎから
「美の京都遺産」なる番組を放送しています。
特に毎週見ているということでもないんですが、
先週だったか、先々週だったか袈裟御前の話が紹介されていました。
大河ドラマのサイドストーリー…、
というほどでもないものの、
昔から小説、映画や演劇で題材になっている有名なお話です。
特に有名どころでは、この映画と、
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これに収められている芥川龍之介の「袈裟と盛遠」ですね。
平安時代も末、遠藤盛遠(文覚-もんがく-)という男がいました。
鳥羽院の北面武士だったようですから、
平清盛や佐藤義清(西行)と同じですね。
この盛遠、強訴に関わったとして、
後白河院の怒りを買い、伊豆の国へと流されることとなり、
同じく伊豆に流されていた源頼朝と出会い、
話によっては、平氏討伐に対して消極的だった頼朝を
焚きつけたともされます。
そんな遠藤盛遠ですが、
お話は彼がまだ若く京にいた頃の事。
同僚・渡辺亘(渡)の美しい妻に横恋慕してしまいます。
その妻が袈裟御前。
盛遠と袈裟御前は従兄妹なので、
この二人は会ってはいたようなんですが、
ある時、盛遠は袈裟御前に迫ります。
俺の妻になってくれ
そんな事を言われても、袈裟御前は渡辺亘の妻。
彼女はもちろん、拒絶しました。
しかし、盛遠は聞こうとしません。
亘から力ずくでも自分を奪うと言っています。
さらに盛遠は袈裟の母であり、
彼の叔母である衣川に、彼女を妻にすると宣言します。
衣川がそれを認めるはずはありませんでしたが、
盛遠は太刀を抜くと、
俺はこの太刀にかけても望みを叶えてみせる
と息巻いています。
母からその事を聞かされた袈裟御前は覚悟を決めました。
盛遠の熱意に対し、彼女は彼に言います。
私は夫のある身。夫がいる限り、あなたの妻にはなれません。
今夜、皆が寝静まった頃、家まで来て下さい。
夫には髪を洗わせ、酒を飲ませておきます。
夫を殺して下さったなら、
私はあなた様の妻になります。
喜んだ盛遠は約束どおり、
夜半に渡辺亘の屋敷までやって来ます。
月は雲に隠れ、辺りは真っ暗です。
目をこらし、家に忍び込み、
予め袈裟御前に聞いていた亘の寝所まで進みます。
その部屋は既に開け放たれています。
約束どおり彼女が手引きをしてくれている
そう思って中へと進みます。
そこでは渡辺亘が眠っているようでした。
濡れ髪と酒の匂い…、間違いない
亘が眠る寝具の傍らまで来ると、
静かに帯びていた刀を抜き、
一気に胸をめがけて寝具ごと貫きました。
盛遠の手には確実な手応えがありました。
これで彼女は俺の妻だ
彼女を手に入れたことを喜ぶ盛遠、
その彼の横を、憐れな被害者がうめき声を漏らし、
血を流し寝具から這い出てきました。
被害者は庭に倒れ込み、息絶えます。
盛遠は袈裟御前への証として、
その被害者の首を切り落とします。
その時です。
雲間から月明かりが漏れ、
盛遠が手に提げている生首を照らしだしました。
盛遠じゃない。人違いだ。
しかも、
これは…、女か?
盛遠が気付いた時には既に時遅し、
彼が殺したのは、愛しい袈裟御前だったのです。
それは袈裟御前の命を捨てた方策でした。
夫や母の代わりに殺されることを選びました。
その場から慌てて逃げ去った遠藤盛遠が
次に考えたのは渡辺亘の仇討ちでした。
このままでは亘に殺されてしまう。
殺されてなるものか。先に俺が亘を殺してやる
渡辺亘を討つべく、
再び、彼の屋敷まで行きますと、
意外にも亘自身が彼を待っていました。
しかも、彼は盛遠の罪を問わないと言っています。
その裁きは神仏がなさる事
と言い、彼自身も出家する、と。
無頼漢の遠藤盛遠も、
やっと自分の罪深さを悟ります。
彼は出家することにしました。
その法名が文覚です。
彼は一つの塚を建てます。
それが恋塚。
恋塚寺は京都市伏見区にあります。
恋塚寺
http://www.geocities.jp/koiduka_dera/