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サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」 その1

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日本人の30%は癌で死亡しているといいます。
確実に医療は進歩しているものの、
未だ難敵であることは間違いありません。

これに医療はどう立ち向かっていくのか、
そんなお話です。

現在、癌の治療として一般的に行われているのは、
外科手術による摘出、抗癌剤による化学療法、
電子線と粒子線を照射する放射線療法です。
そう遠くない未来に、
もう一つ、新しい癌治療の方法が実用化されるかもしれません。

サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

これは足先の血管の標本です。
隅々まで血管が張り巡らされています。
私たちの体、組織は酸素などが必要なため、
それを運ぶための運河が必要です。
それが血管で、太い血管から分かれて、
さらに枝分かれして毛細血管の末端にまで、
酸素を届けています。
全身に広がる血管網、
もしも、一人の人間の血管を直線にした場合、
どれぐらいの距離になるでしょうか?

なんと10万kmにもなるんだそうです。
地球は1周4万kmですので、
2周半の長さになることになります。
人間が生きていくためには、
それだけの血管が必要だということなのでしょう。

私たち動物の血管が出来る様子を見るために、
受精卵を観察します。
体が透明に近いゼブラフィッシュの卵は、
やがて2個の細胞に分かれますが、
この時にはまだ血管はありません。
2つの細胞はまだどちらもほとんど同じもので、
分化されていない状態だからです。
20時間ほど経つと、少し魚らしい姿になります。
心臓も確認出来、それとともに、
脊柱に沿った血管も出来てきました。
次にその血管から背中の方へ
何本もの血管が伸びてきました。

サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

その血管が伸びる様子を観察していますと、
伸びては縮み、右に伸びては左へ行き、
まるで延ばす先を手探りで探しているようです。
なんと血管は細胞から

呼ばれて出来る

ものなんだそうです。

カリフォルニア大学のナポレオン・フェラーラ教授は、
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を発見しました。
この発見により、
教授はラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞を受賞しています。
細胞からVEGFが放出されると、
近くの血管がそれを捕捉、
すると、そこから新しい血管が作られ、
VEGFが濃い方向へと血管が伸びていきます。
細胞はVGEFを放出することにより、
血管を呼び寄せていたのです。

では、細胞はどのような時に
このVEGFを放出するのでしょうか?
VEGFを放出すのは血管を呼び寄せるため、
血管の最も大きな役割は酸素の運搬でした。
細胞は、酸素不足になると、
VEGFを放出し、血管を誘導して、
酸素不足を解消しようとする訳です。

サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

これは傷を負った皮膚の断面です。
元々は繋がっていた血管が分断されています。

サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

この傷はやがて修復されます。
しかし、血管はまだ繋がっていません。
そのため、新しく出来た部分では、
酸素不足が起こります。
すると、この部分の細胞がVEGFを放出、

サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

新しい血管が出来るという仕組みです。

実際にこのメカニズムで出来た血管がこれです。

サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

太い血管は元からあったもので、
細い血管がVEGFに誘導されて延ばされたものです。
細い血管になりますと、
内径5µm程度、赤血球は7~8μmぐらいですが、
血球はグミのように柔軟なので、
この狭い管の中でも通ることが出来ます。
ゼブラフィッシュの全細胞や
私たち人間の全細胞にもこのようにして、
血管が作られることで、
酸素などが運ばれてきているんです。



血管新生

血管が枝分かれ、新しく作られることをこう呼びます。



サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

この血管の画像、
上で見たものとは様子が違います。
突起のような行き止まりも多く、
また、これらはあらゆるところで、
同時多発的に血管新生が起きた状態です。

サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

これが時間が経過すると、
このようになります。
ほとんど、血管しか見えません。
これが癌の組織です。

血管新生は怪我や月経で起きますが、
健康な成人では、それ以外で起きることは滅多にありません。
しかし、癌は違います。
癌があると膨大な量の血管が無秩序に新生されていきます。

初期の癌細胞は血管がなくても生きていけます。
血管に対する働きかけもありませんし、
私たちの生命にも影響を与えません。
その大きさは2mm程度まで。
この大きさを超えると、状況が変わります。
大きくなる癌細胞は、通常ではあり得ない量のVEGFを放出、
猛烈な勢いで血管を呼び込みます。
さらに癌組織が問題なのは、
通常の血管が新しく分裂するのに要する時間が36時間なのに対し、
癌に伸びた血管はその半分の18時間で分裂できます。
まだ問題はあります。
通常、シャーレなどに取り出した血管は、
数時間で死滅しますが、
癌に伸びた血管は3日後でもまだ増殖を続けています。

自分が成長するために周りの血管を変え、
酸素や栄養を要求し続ける、
私たちが癌に手を焼いているのは、
こういった癌の性質に原因があるようです。
癌細胞は高い増殖力を持っています。
そのぶん、癌組織は常に低酸素傾向になってしまいます。
そのために多くの酸素が必要になり、
血管の性質、姿を変えさせているのでしょう。
また、癌細胞に伸びた血管は染色体も変化してしまいます。

サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

サイエンスZERO 「がんを制す!知られざる 血管の攻防戦」

上が通常の染色体で、
下が癌細胞に伸びた血管の染色体です。
通常は2本で一対ですが、
下のものは3本、4本、1本のものもあります。
つまり、遺伝子ごと変化してしまい、
私たちには制御出来ない状態になっている血管なんです。


ここまで血管新生と、
癌組織と血管の関係を見てきました。
この巧妙に増殖し続ける癌に対し、
未だ私たちは決定的な対処法を見つけてはいません。
しかし、その対処法について、
こう述べた人物がいました。
今から約40年前のことです。

血管を伸ばせない癌は増殖も転移もしない
癌の血管を壊せば癌で死ぬことはなくなるのではないか


ハーバード大学の小児外科医、
ジュダ・フォークマン教授です。
40年の時を経て、
私たちはその技術を手に入れることが出来るかもしれません。


…続きます。


ねてしてタペ



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