タイムスクープハンター 「誕生！水茶屋アイドル」 その2

こちらから続いております。

http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11543598123.html



旅籠で絵師・及川北英がカメをモデルに絵を描いていると、
外には人だかりが。
彼らが持っていたのはこの瓦版。

あけびや おうめ 浮世絵師と逢引き



この瓦版をカメに突き付け、
真実を確かめようとする権左衛門。

しばらく、うつむいたままのカメだったが、
ゆっくりと顔を上げて留吉のほうを見、
静かに頷いてそれが事実であることを認めた。

絵師に詰め寄る権左衛門。

やめてください！

制止するカメ。しかし、北英は

いや、俺が悪かった。

と非を認めている。

謝ることないです！



別に人様に顔向けできないようなことはしてないじゃない！

権左衛門は、

これはお前一人だけの問題じゃないんだぞ。

事の重大さを理解させようとしている。
しかし、

あんたの話でもないでしょ！
あたしはあたし。

カメは耳を貸さない。
それでも北英のほうは

ちゃんと筋を通さずにこうなった手前に咎があります。

と自分の責任を認めて頭を下げている。

まだまだこれから稼げるというのにと、
怒りが治まらない権左衛門に手を着いて詫びる北英は、

本当に申し訳なく思っております。
ただ、浮ついた気持ちでおうめさんと会っていた訳では…

と、説明するものの、

そんな問題じゃない！！

と、権左衛門は怒鳴り声を上げ、

ゆくゆくはおうめさんと…

その怒声に負けず続ける北英。

いや、おカメさんと…、
所帯を持ちたいと思っています。

彼は誠意の全てを話す。

しかし、権左衛門は治まらない。

そんなことは許さんぞ。
金輪際、うめと会うことは絶対！
厳禁する。

これには留吉が間に入る。

ちょっと待ってください。
この人は所帯を持ちたいと言ったんですよ。
たしかに筋を通さなかったのはよくないかもしれねえ。
でも、男がこういうことを言うのは
そりゃあ覚悟のいるこった。

それはカメの親代わりとしての言葉だったのだろう。

留吉さん、あんたせっかくここまできたのに、
いいのですか？

看板娘に男がいるとなれば、
人気はがた落ちだ。
あくまで商人の権左衛門は駕籠を用意させる。



そして、旅籠の人間には金を掴ませて、
最初からカメがここに来ていないと、言い含める。

駕籠を旅籠の中にまで入れて、
そして、その駕籠が出ていく。
この駕籠でカメの群衆を突っ切ろうというのだ。
しかし、ファンたちは駕籠を進ませず、
その中にいるのがウメではなく、
旅籠の奉公人であることが発覚してしまった。

その頃、カメと留吉、権左衛門は
旅籠の裏口から脱出。
だが、目敏いファンの一人がカメたちの後ろ姿を見つけ、
走り寄ってきた。
慌てて逃げる3人。
追いかけてくるファンをまいて、
「あけびや」へ戻ることが出来た。
しかし、店にも噂を聞きつけたファンの人だかりが。
3人は裏から店に入るが、
このままでは事態の収拾がつきそうにない。

こうなったら、もうおうめの口から
「及川北英とは関わりない」と、
ごひいきさんたちに言うしかないだろう。

嘘をつけというのか、と留吉の顔が強ばる。

ここまでみんなで頑張ってきたんだから、
店のために俺の言うとおりにしろと権左衛門。





わかりました。



カメはそう言って店の入口へと進む。

戸を開けて出てきたカメに男たちは
瓦版を手に口々に質問する。

おうめちゃん、これ、どうなってんだよ。
説明してくれよ。



まずは、こんな騒ぎになってしまったことをお詫びします。
ごめんなさい。

頭を下げるカメ。
そして、本題に入る。

瓦版に書いてあることは、



すべて嘘



…ではありません。
及川北英さんとは、
真剣にお付き合いしております。

真実を語り始めたカメを止めに入る権左衛門を振りほどき、
話を続ける。

元々私は出来の悪い娘でした。
あいさつもろくに出来ず、
口の悪い阿婆擦れでした。
私は子供の時分に両親を亡くしています。
自分の運命を恨んでいました。
でも、気付いたんです。
身寄りのない私を、
拾って育て、置いてくれたのが、



この店であり、おやじさんだったって。
それを気付かせてくれたのが、
北英さんなんです。



彼はありのままの私を受け入れてくれました。
甘えていた私を叱ってくれました。
私の本当の名前は…



店の中に連れ戻そうとする権左衛門を突き飛ばし、

カメです。
みんなに知られてしまった以上、
もううめでいることは出来ません。
「あけびや」のうめはもうおしまい。



今までありがとう！

今度こそ、権左衛門がカメを店の中へ押し入れる。

何てこと言ってくれたんだ、お前。
くそ…、もっともっと稼げたのにお前…

権左衛門は怒り続けている。
しかし、留吉は

いや、よく言った。たいしたもんだよ。
客に嘘をついていてよ、
そんな生き方、おカメの性に合わねえ。
こいつはおうめじゃなくて、
うちの大事なおカメなんだ。

続けて、留吉は権左衛門に深々と頭を下げて詫びる。

大山さん、すまえねえ。
今までのことはほんとに恩義に思ってる。

留吉の隣でカメも頭を下げる横を通り過ぎ、
権左衛門は裏口から出ていったのだった。


翌朝、店に下りてきたのはうめではなくカメだった。
もう売ることはないであろう姿絵などを片付けていた。
その時だった。

おカメちゃん！

入口の向こうから男の声がした。

障子を開けてみると、



そこには大勢の馴染み客が
開店を待ちかねていたのだ。

今日から俺たち、おカメちゃんのひいきになるから。

彼らは正直に話してくれた彼女の心意気に惚れたのだという。

店は以前と変わらず繁盛となった。


明和年間に任期となった笠森お仙は、
笠森稲荷を管理していた幕府御庭番の倉地家に嫁ぎ、
突然、看板娘を引退している。
そのニュースに江戸中が大騒ぎになった。
大山権左衛門が仕掛けたアイドルビジネス。
歴史の中で忘れ去られても、
1人の女性の人生を大きく変えたことは間違いない。
現れては消えていく、アイドルという偶像。
そして、それを追い求める人々の姿は、
時代を超えても変わらない。
それを実感する取材となった。

以上、コードナンバー921832、
アウトします。

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相変わらず、ヘンな話の多いタイムスクープハンターですが、
今回のシリーズは特にその傾向が強いように思います。
今回は笠森お仙以降のブームから、
現代のアイドルになぞらえていました。
特に今のアイドルは物販が生命線ですし。
それにしても「あけびや」はあからさまでしたね。
「AKB屋」なんでしょうから。
その観点ですから、女性ファンは登場しませんでした。
その点が少し残念でしたね。

江戸の町のファッションブーム ～鈴木春信 笠森お仙～
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-10380949774.html

世界ふしぎ発見！ ～笠森お仙は江戸の町のファッションリーダー～
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-10877528920.html