Quantcast
Channel: テレビ番組 時事ネタなど書いていきます。はい。
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2031

なぜハキリアリのような高度な社会性が成立するのだろうか? その1

$
0
0

ハダカデバネズミの記事の時に、
高度な分業が行われている社会性について、
いずれ考えてみたいとお書きしていますが、
まずはハチ・アリの膜翅目昆虫のうち、
真社会性のものについて考えます。
そういうば、今夜の地球ドラマチックはハキリアリでしたね。
私はまだ見ていないんですが、
習性などについてはこちらをご覧下さい。

ダーウィンが来た!「パナマ・ハキリアリの地下王国に潜入!」 -別動画付き-
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11546537205.html

ダーウィンは「種の起源」などを著し、
進化論の基礎を築きましたが、
いくつかの大きな謎を残したまま、
この世を去っています。

そのうちの一つが(真社会性の)ハチやアリの問題です。
彼女たちの特長は不妊のメスがいることです。
「不妊」という特徴は、
どのようにして次の世代へと受け継がれていくのか、
子供は生まれないのであるから、
その特徴が子に伝わるはずはない。
この問題は彼の進化論と矛盾する問題でした。
それでもダーウィンは一つの仮説を喩えで以て説明しようともしています。
それはウシの肉質に喩えてのもので、
ある牛肉を食べてその優れた肉質を確認した時には、
そのウシは既に死んでいるので、
そのウシからその肉質を持つ次世代を生み出すことは不可能であるものの、
そのウシと血縁を持っているウシは
その肉質を受け継いでいることが期待できるので、
それを飼育すれば、その優れた肉質が再現出来るという考えでした。

ところで、前世紀前半の英国の生物学者、
J.B.S.ホールデンは、
「溺れている兄妹のために命を投げ出すか?」と問われて、

2人の兄妹、4人の甥、8人のいとこのためなら喜んで命を差し出すだろう

このように答えたそうです。
どういうことでしょうか?
当時、これが意味するところを理解出来た人が
どれぐらいいたのか知りたいところです。

1960年、ウィリアム・ドナルド・ハミルトンにより、

血縁選択説

という理論が発表されます。
両性による生殖を行う種のAという個体がいた場合、
Aの子はその遺伝子の1/2をAから受け継いでいることになり、
また、Aの子の子、
つまりAの孫は1/4はA由来の遺伝子であることに。
キョウダイだとどうでしょうか?
AのキョウダイであるBは、
共通の両親から生まれました。
ということは、AとBというキョウダイは、
1/2の遺伝子を共有していることになります。
そして、Bの子、つまりAにとっては甥か姪になりますが、
甥や姪はBの半分の遺伝子を受け継いでいるので、
Aと彼の甥・姪は1/4が共通になります。
同様にして、「Aの子」と「Bの子」の間、
つまりいとこ同士では1/8の遺伝子が共通だということになります。

ダーウィンの時代には
まだメンデルの「遺伝の法則」は知られていなかったものの、
彼は親から子へ性質が遺伝すると考えていました。
しかし、ある性質が親からの由来ではなく、
叔父や大叔母からの由来であることもある訳で、
これは仮にその個体が子孫を残さなくても、
キョウダイなどの血縁者を通して、
その性質が後世に伝えられるということを示しています。

敵に襲われた時に、
自ら囮となって仲間を逃がそうとする習性を持つ種がありますが、

(音量注意)


それは仮に自らが犠牲になっても、
仲間の中に近親者がいて、
その習性が近親者たちを通して受け継がれるために、
そのほうがよりよく自己犠牲の遺伝子が受け継がれるならば、
それはその種の習性となり得ます。
また、「不妊」のメスが子孫を残す訳ではないのに、
次代に「不妊」の性質が受け継がれていくのはなぜなのか、
その理由はこのようにして説明されます。

ホールデンはハミルトンの理論以前に、

2人の兄妹、4人の甥、8人のいとこのためなら喜んで命を差し出すだろう

と話していたことで、
既にそれを見通していたと考えられています。
自分が子を作らず死んでも、
2人の兄妹が、4人の甥が、
あるいは8人のいとこが子を作れば遺伝子の観点からは、
自分の性質は遺伝されていくということを
話していたのでしょう。
ダーウィンもメンデルの理論さえ知られていない中、
人為淘汰の現象を用いて、
「不妊のメス」を説明しようとした点は正しく偉人だと思います。

ただ、これだけでハキリアリのような、
高度な分業制の社会を説明するには、
彼女たちの一つの特殊性を理解しないといけないでしょう。










ねてしてタペ

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2031

Trending Articles